2011 Fiscal Year Annual Research Report
目標値の設定ができる省電力型無線LANシステムに関する研究
Project/Area Number |
22500061
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡村 耕二 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 教授 (70252830)
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Keywords | 無線LAN / 省電力 / ネットワーク運用 / 利用者認証 / 新世代ネットワーク / SLA (Service Level Agreement) / プロトタイプ / 通信機器の省電力化 |
Research Abstract |
省エネルギー運用によって消費電力は削減されるが、利用者の利便性は下がる。本研究の目的はこの利便性を数値化し、利用者の利便性に応じた省電力運用を行なえる無線LANシステムを研究開発することである。平成23年度は省電力運用のための基本機能の設計、評価ならびにプロトタイプの実装を行なった。無線LANアクセスポイントの給電制御について、例えば、よくある自動消灯式の照明のように人間をセンサーなどで物理的に検知し給電制御を行なえば容易に実現可能であるが、実際には無線LANの利用権限のない人間に反応して無線LANアクセスポイントを起動したり、無線LANに接続したパソコンをおいたまま人間が去った場合に給電が止まったりなどで実用性に欠ける。そこで、本研究では端末認証と給電制御の統合を行なった。そのために、電源制御用の無線LANアクセスポイントと端末の間の無線ネットワーク接続におけるプロトコル中で認証が成功すると、データ通信用の無線LANアクセスポイントを起動させる機能を設計した。この機能の実現においては、電源制御用のアクセスポイントが認証後データ通信用のアクセスポイントを起動するので通常よりも利用開始になるまでに時間がかかるので、その時間の短縮がポイントとなる。そのため、プロトコル解析を詳細に行ない、時間短縮にはプローブ要求のタイミングが重要であることを発見した。さらに、設計した機能をプロトタイプ実装を行ない、省電力機能の測定・評価を行なったところ、39.9~56.1%の使用電力を削減させることができることがわかった。また、平成23年度は新世代ネットワークについて調査を行ない、新世代ネットワーク支援用通信機器への省電力機能の導入について検討を行なった。また、本研究は給電制御により省電力化を目指しているが、通信機器のハードウェアやファームウェアでの省電力機能についても調査を行ない、今後はこれらの機能を利用したより効率の高い省電力化について研究をすすめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、省エネルギー化が一般的に困難である通信機器の運用において、省エネルギー化を実現し、さらに、削減する電力量や維持すべきサービス品質などの目標値を設定可能にするための研究を行うことである。平成22,23年度の研究によって1)システムの基本設計、2)省エネルギー運用とサービス品質を関連付けるSLAの定義を行うことができた。これらは、本研究をすすめる上での大きな3の項目のうちの2つであり最終年度の平成24年度には残りの項目(実装・評価)について取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成24年度は、いままでに開発したプロトタイプの改良をすすめ実装を完了させ、さらに実環境に近い状態での評価を行う。また、本研究を拡張して無線だけではなく有線ネットワークにも適用できるための技術についても取り組む。特に平成23年度から検討をしている新世代ネットワークを支援する従来とは異なる新しい通信機器に省電力機能を最初から取り込むための研究を行う。また、その際に機器のハードウェア、ファームウェアの省電力機器との連携についても取り組む。結果として、当初の目標であるサービス品質に基づいた省電力運用可能な無線機器の研究開発に加え、省電力運用可能な有線機器の実現に必要な機能の見積もりや機器が持つハードウェア的な省電力機能との連携方法についても考察を加え本研究をまとめる。
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