2011 Fiscal Year Annual Research Report
人体通信を利用したウェアラブル機器の設計に関する研究
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22500106
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 健 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (40178645)
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Keywords | ウェアラブル機器 |
Research Abstract |
本研究の目的は,人体が導電性であることを利用した「人体通信」をウェアラブル機器に広く利用するための設計技術を確立することである.本年度は,数値電磁界解析による人体通信の伝送特性の解析,および電磁界解析用人体モデルの改良を行うとともに,受信信号レベルを実験的に評価するための受信機を製作し,受信信号強度の評価を行った.人体通信機器の応用例として従来から解析を進めてきた腕時計型の機器に代わり,本年度は今後の普及が見込まれる高機能補聴器における両耳間のデータ通信を想定して解析を進めた.具体的には左右の耳に装着した耳掛け式イヤホンの一方を送信機,他方を受信機として1~100MHzの周波数に関して伝送特性を解析した.その結果,送受信機とも2電極を人体に接触させる方式の伝送効率が高いことが分かった.これは腕時計型の人体通信機器の受信機は1電極接触方式の伝送効率が高い,という設計指針と異なる結果である.この違いを説明するため,送受信機が人体の同じ側にある場合と,人体を間に挟んだ位置にある場合について比較した結果,前者の場合は人体周辺の空間に形成される電界の寄与が大きいが,後者の場合は人体内部に形成される電界の寄与が大きいことが明らかとなった.電磁界解析に用いる人体モデルに関しては,皮膚,筋肉,脂肪を層状にしたモデルが,筋肉の特性のみを用いた均一モデルの簡便性と,血管等の分布までモデル化した詳細モデルの精度の高さの長所を併せ持ち,実用的なレベルで解析誤差も小さいことが分かった.評価実験用の受信機は,当初の計画通り受信信号レベルをPWM変調してLEDを駆動し,光ファイバを用いて計測する方式とし,計測器に接続する金属導線ケーブルの影響を除去した.受信信号強度を計測した結果,送信機出力1Vppの送信機を指先で触れた場合の腕時計型受信機における受信信号が数mVであり,電磁界解析とオーダが一致し,電磁界解析の妥当性が確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析と実験はほぼ予定通り進んでいる.得られた結果により,当初の予定とは解析条件等がやや異なる場合も存在するが,研究計画全体を変更する必要はない.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,より実用的なレベルの電磁界解析と実験評価を進める.具体的には,ウェアラブル機器の装着が想定される部位を手首や上腕部に限定し,これまでに知見を活用して送信機と受信機の大きさ,電極のサイズや取り付け方向などの設計例を複数用意して伝送特性を電磁界解析により詳細に調べる.解析結果は受信信号レベルを計測する実験により定量的に評価し,解析モデルおよび設計指針の妥当性を評価する.これらの結果を総合することにより,本研究の目的である人体通信機器の設計法をまとめる.研究成果を取りまとめ,学会発表を行う.
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