2012 Fiscal Year Annual Research Report
大きな両眼網膜像差による人間の空間認識における運動の役割
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22500188
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
佐藤 雅之 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (40336938)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 両眼網膜像差 / 運動視差 / 奥行き情報統合 / 空間周波数チャンネル / 視差エネルギーモデル / 速度同調性 / 奥行き知覚 |
Research Abstract |
1.DoG刺激による空間特性の検討 [目的] 大きな網膜像差を検出するために低空間周波数成分に感度をもつ受容野の大きいチャンネルが働くという仮説(視差エネルギーモデル)を検証する.[実験方法] テスト刺激として1次元DoGパターンを用いて,奥行き弁別に必要なコントラストの閾値を測定した.テスト刺激における正のガウス関数の空間定数(標準偏差)を0.11°,0.38°,1.1°,2.3°とした(負のガウス関数の空間定数はその1.5倍).これは1.6,0.48,0.16,0.08 c/degの空間周波数に相当する.3名の被験者について実験を行った.[結果と考察] 刺激を動かさない条件では,網膜像差量が2°を超えるとコントラスト感度が急激に低下したが,刺激を動かす条件では,大きな網膜像差に対して高い感度が示された.視差エネルギーモデルによる理論的限界を超える大きな網膜像差に対しても奥行きが知覚されることはモデルの修正の必要性を示している. 2.速度の効果 [目的] これまでに我々が行った実験では,刺激の呈示時間を一定とし,刺激の運動振幅を網膜像差量と同じ値としていた.ここでは,同じ網膜像差量に対して,運動振幅を変えたときの感度の変化を明らかにする.[実験方法] 網膜像差量は4.8°とした.テスト刺激における正のガウス関数の空間定数は1.1°(0.16 c/degに相当)とした.テスト刺激の呈示時間を0.05,0.1,0.2,0.4,0.8 sの5段階で変えた.[結果と考察] 呈示時間が短いときには明確な速度の効果は見られなかった.呈示時間が長いときには15~30 deg/sに感度のピークが表れた.これは両眼網膜像差検出メカニズムの受容野構造を知るうえで重要な知見であると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,着々と奥行き知覚メカニズムの時空間特性が解明されつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
1.本研究により明らかになった空間周波数特性が視差エネルギーモデルを逸脱するものであることは興味深い事実である.今後,実験結果に合うようにモデルを拡張することを考えたい. 2.運動が奥行き知覚に及ぼす効果が刺激の速度に依存し,最大の感度を与える速度が15~30 deg/sであることを解明したことは重要な進展であると考える.今後は,さらに,刺激の空間特性と速度チューニングの関係を明らかにしたい.
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Research Products
(5 results)