2013 Fiscal Year Annual Research Report
大きな両眼網膜像差による人間の空間認識における運動の役割
Project/Area Number |
22500188
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
佐藤 雅之 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (40336938)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 両眼網膜像差 / 運動視差 / 奥行き情報統合 / 時空間周波数チャンネル / 奥行き知覚 |
Research Abstract |
両眼網膜像差は有効な奥行き手がかりであるが,視差量が大きすぎると複視が生じ,奥行きが知覚されないことが以前からよく知られている.しかし,最近の我々の研究により,刺激を動かすことによって,二重像が知覚されるような大きな両眼網膜像差に対して,鮮明な奥行きが知覚されることが明らかなった. 本年度は,この運動による立体視促進効果のメカニズムを解明するために,刺激の運動に伴う変位の効果について検討した.19名の被験者に対して,(i) 刺激を水平方向に動かす条件と(ii) 刺激に変位のみを与え動かさない条件で知覚される奥行き量を測定し,比較した. その結果,刺激の変位は重要ではなく,刺激の運動そのものが立体視の促進に寄与していることが明らかになった.これは,網膜像差を検出するメカニズム(例えば,第1次視覚野の単純型細胞)が動的な時空間特性をもっていることを示唆している. 一方,知覚される奥行き量には大きな個人差があることが明らかになった.実験に参加した19名の被験者のうち,10名は,刺激を動かすことにより大きな網膜像差に対して大きな奥行きを知覚したが,6名は,網膜像差に対して奥行きを知覚しなかった.さらに,3名の被験者は,網膜像差から幾何学的に予測される奥行きとは反対の奥行きを知覚した.この実験によって明らかになった個人差は,これまでに測定した立体視力や奥行き情報統合における重み付けなどの基礎的な特性では説明できないことが示されており,新たな研究課題を提起している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,奥行き知覚に関する新しい知見が着々と蓄積している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験によって明らかになった立体視の個人差は大変興味深い問題を提起している.今日一般的に行われている立体視力検査では,多様な状況において人が知覚する奥行きを予想できないことが明らかになった.今後,十分にして必要最小限の立体視能検査について検討していきたい.
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Research Products
(4 results)