Research Abstract |
近年,研究評価のための客観的指標に対する要請が高まり,ビブリオメトリックス指標に関心が向けられている。しかし,インパクトファクタなどの諸指標は適切に用いられているとは言い難く,評価される側の大学や研究機関も,評価から得られる情報を活用しているとはいえない。研究評価は本来,大学・研究機関側が自らの強みや弱点を知り,将来の方向性を定めるために用いるべきものであり,結果に一喜一憂するだけであってはならない。本研究では,大学の研究力を一次元的にランキングするのではなく,大学の特徴を明示できる多次元アセスメント手法の開発を試みる。 研究初年度にあたる本年度は,研究の第一段階として,基盤となるデータを整備するとともに,研究活動の構成要素の検討を進めた。まず,研究力の指標として,研究費に注目した。従来,研究費は研究生産性に影響するインプット指標として扱われてきたが,研究費申請は同業者により厳しく審査されることから,研究費の採択件数や金額を大学研究成果のアウトプット指標と見ることも可能だと考えられる。そこでわれわれはこの観点に立ち,科学研究補助金データにおける研究代表者,研究分担者の所属大学に着目し,大学評価の指標や大学間研究ネットワークについて検討した。これまで科研費については研究代表者のみで論じられてきたが,研究分担者の情報も用いることにより,とくに中・小規模の大学の役割に関して新しい知見が得られた。 近年,産学連携も多くの大学で精力的に進められている。これまでわれわれは,産学連携について主として論文の共著関係から分析を行ってきたが,これらの指標とは別に,大学のWebサイトに現れた情報により産学連携の状況を分析・計量化する取り組みも始めている。本年度は,自然言語処理ツール茶筅および機械学習ツールCRFを用いて,産学共同研究の文書を自動判定する手法を検討した。
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