2011 Fiscal Year Annual Research Report
推論と判断における等確率ヒューリスティックと因果性
Project/Area Number |
22500247
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
服部 雅史 立命館大学, 文学部, 教授 (50301643)
|
Keywords | 認知科学 / 実験系心理学 / 因果推論 / 論理的推論 / 確率判断 / 計算論的モデル |
Research Abstract |
本年度は,確率モデルを通して推論・判断に関する多様な現象を包括的に捉えるという目的のため,以下の三つのテーマに関する研究を実施した。 (1)定言三段論法 まず,定言三段論法のモデル化に関しては,昨年度から取り組んでいる確率サンプリング・モデルを改良・拡張した。主な改良点は,アドホックな仮定を廃止したことと,モデル評価のためのデータを広げたことである。その結果,データへのフィットが向上した。研究成果は国際誌に投稿し,査読では一定の評価を得たが,いくつかの問題点も指摘され,さらなる改良・拡張が必要であることが判明した。現在,論文を推敲中である。 (2)基準率錯誤 本研究代表者によるこれまでの研究から,基準率錯誤は,人々が等確率性を仮定することによって起こることが明らかにされたものの,等確率性を仮定する理由が明らかではなかった。そこで,この原因は否定情報の使いにくさにあると考え,変形問題を使ってその点を実証的に確認した。その結果,等確率ヒューリスティックが関係する他の問題との関係が明確になった。 (3)モンティ・ホール問題 本研究では,等確率ヒューリスティックと因果性の親和性が高いと仮定する。もしそれが正しければ,等確率性の仮定が課題の正解に寄与する場合には,課題のカバーストーリに因果性を導入することによって課題の正答率が上昇するはずである。そこで,標記課題に対してこのような操作を行い,劇的に正答率を上昇させることに成功した。この結果は,本研究が最終目的とする等確率ヒューリスティックと因果性の関係の解明に示唆を与える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定言三段論法の確率サンプリング・モデルに関する研究成果を英語論文としてまとめ,国際誌に投稿したところ,査読者より多くの修正要求があった。モデルの再構築,新たな実験の実施など,その対応に多くの時間を費やす必要が生じたため,当初予定していた連言錯誤の確率モデルを構築することができなかった。しかし,当初の研究計画にはなかった基準率錯誤とモンティ・ホール問題に関して,新しい方向への研究進展をみた。以上より,トータルとしては,おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画にあった研究1~4のうち,研究2(確率推論の確率モデル構築)に含まれていた連言錯誤の確率モデル構築と,研究3(帰納推論の確率モデル構築)に含まれていた包含錯誤の確率モデル構築については,引き続き射程に入れて研究を続行するものの,今後は優先順位を下げて実施する。その代わり,定言三段論法推論の確率サンプリング・モデルの完成を高めること(研究1)を目指し,同時に,今年度新規に着手した基準率錯誤とモンティ・ホール問題の研究のさらなる展開を模索する。その理由は,これらの研究は,本研究の最終目的となる研究4への示唆が大きいと考えられるからである。
|