2012 Fiscal Year Annual Research Report
推論と判断における等確率ヒューリスティックと因果性
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22500247
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
服部 雅史 立命館大学, 文学部, 教授 (50301643)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 認知科学 / 実験系心理学 / 因果推論 / 論理的推論 / 確率判断 / 研鑽論的モデル |
Research Abstract |
第1に,定言三段論法推論について,昨年度までの研究で構築したモデルをより精度の高いものに修正した。その後,新たに実験を実施し,このモデルが論理的推論における内容効果を説明できることを実証した。 第2に,モンティ・ホール問題(非常に難しいことで有名な確率判断問題)について,因果構造の明確化によって正答率を上昇させることに成功した。この結果は,因果関係が確率構造の理解を方向づけるという仮説を支持した。 第3に,基準率課題について,課題中で提示する情報を「図ベース」とわれわれが呼ぶ様式に統一することによって,正答率を上昇させられることを実証した。この結果は,生起/不生起の認知の非対称性を意味し,因果性認知と共通の認知基盤の存在が示唆された。 第4に,共変に基づく因果帰納について,事象の特性(否定の顕在性[顕在/潜在]×システムへの介入性[介入/観察])が推論結果に影響することを実証した。この結果から,因果性認知に関わる事象特性を特定するための示唆が得られた。 第5に,洞察問題解決における思考の二重性について実験的にアプローチした。二重課題法を用いて,意識的作用が無意識的過程に対して妨害的に働く状況を特定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定言三段論法推論に関する研究は,1度目の論文投稿後,修正に手間取ってまだ出版にいたっていないが,最終年度の今年度内に執筆・投稿し,出版にこぎつけられる見込みがある。 また,当初予定していた連言錯誤の確率モデル研究は実施していないが,その代わりに,当初の予定にはなかった基準率問題のモンティ・ホール問題について,実験的研究が順調に進んでおり,新しい方向への研究進展を見た。最終年度の今年度中に出版できるよう,研究成果をまとめていきたい。 さらに,当初は想定していなかった二重過程理論に基づく思考様式の違いについても,目覚ましい研究成果が上がった。 以上より,トータルとしてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,最終年度であるため,研究成果を公表することを前提に,これまでの研究結果を収束させるための作業に力点を置く。 定言三段論法推論については,確率的量化子を扱えるようモデルを拡張した上で,これまでの実験結果を組み込んで論文として完成させ投稿する。 因果帰納については,もう一つ,抑制性の原因に関する実験を実施した上で,これまでの研究成果と合わせて論文にまとめて投稿する。 モンティ・ホール問題と基準率錯誤については,因果帰納の研究成果の理論的含意と合わせて,実験論文としてまとめるための方向性を探る。 洞察問題解決における思考の二重性については,昨年度の研究によって来年度以降に扱うべき大きな研究テーマが見えてきたので,今年度はその準備としての実験を実施する。
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Research Products
(8 results)