2011 Fiscal Year Annual Research Report
確率過程に対する統計的漸近理論と損害保険数理への応用
Project/Area Number |
22500258
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
阪本 雄二 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70215664)
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Keywords | 最良線形予測 / 逐次アルゴリズム / 定常過程の推定 / 構造方程式モデル / 頑健性 |
Research Abstract |
時系列の最良線形予測量に関する逐次アルゴリズムの効率と多変量解析における未観測変量を含むモデルの推定問題の頑健性について検証した. (1)時間経過とともに観測値が蓄積される状況において予測問題を考える時,逐次的な予測アルゴリズムが効率的であり,従来,ダービン=レピンソン・アルゴリズムとイノベーション・アルゴリズムが用いられてきた,どちらも,ヒルベルト空間における正規直交基底を適当にとることによって,新しい情報の過去の情報に依存しない成分を取り出すことによって,過去の予測結果を有効に活用する方法であることがわかった.また,定常時系列への推定問題への応用においては,自己回帰型にはダービン=レビンソン・アルゴリズムが高い効率を持ち,移動平均方にはイノベーション・アルゴリズムが優れていることが経験的に知られていたが,因果性を仮定して,自己回帰型を移動平均型で表現した時,イノベーション・アルゴリズムに対応する正規直交基底に情報損失がみられることが明らかになたった. (2)多変量データに未観測変量が含む場合,観測変量と未観測変量の関係は共分散構造に現れる.観測変量の共分散構造を明らかにする汎用的な手法として構造方程式解析が主に用いられるが,その理論的根拠は誤差の正規性に依存するものであった.実際のデータでは必ずしも正規性が満たされとは考えにくいものが多数あり,正規性に基づく手法の検証が重要な課題である.今年度は正規性を楕円性まで拡張した時に,従来の手法がどの程度有効なのか,漸近分散により評価した。その結果,楕円性を仮定した手法と正規性を仮定した手法では,正規性が崩れた時にでも,同等の有効性を持ち,因子分析モデルでは,正規推定量の情報損失がないことが数値実験から明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定した統計量は,古典的な最尤推定墨や尤度比検定統計量を念頭に置いたものであったが,保険数理への応用においては,確率分布を想定しない最小2乗型の統計量が多用されており,それらの漸近展開の正当性や展開係数の導出において必要な性質を整理する必要があった.また,未観測変数のあるモデルが応用上重要であることが分かったので,それらの頑健性についても明らかにする必要性が生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,従来の計画通り,連続時間モデルの離散観測に基づく統計量の漸近特性を明らかにする方向で,研究を進める予定である.当初念頭に置いた具体例に新しい統計量が加わったが,漸近展開の導出においては,十分条件の大きな変更は必要でないことが予想され,従来の結果を微修正することで,当初の目標に進むことができるものと考えられる.
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