Research Abstract |
本研究は,観測個体数や項目数が膨大であるデータを念頭に,発見的な考察を可能とする可視化手法や次元縮約手法・変数選択手法を検討・提案し,データの様相をより正確にとらえられるようにすることで,そのための効率的な計算アルゴリズムの開発と計算環境の提供も行っていくことが目的である。 本年度の研究実績は,次の通りである。 「(1)先行研究等の情報収集と分析・整理」については,1年目に引き続き,いくつかの学会に参加したり,連携研究者の協力を得たりして,シンボリックデータ解析を含む情報の縮約および可視化の情報収集を行った。また,大規模・高次元データの発見的情報表現と効率的情報縮約に関する研究会をもち,最新の研究について討議を行った。 「(2)可視化手法と次元縮約手法および変数選択手法の検討」および「(3)インタラクティブ性の導入」については,JavaScriptとSVGを利用し,タッチパネル上での指ジェスチャーによるグラフ操作システムのプロトタイプが完成し,既存の次元縮約の可視化や変数を主観的・動的に選択するインタフェース開発の基礎研究ができた。 「(4)計算効率の検討」については,特に,反復計算が繰り返し必要になる計算の加速化の検討が進み,非計量主成分分析を例に,3倍から4倍加速される加速化手法が数種提案できており,現在,その評価に入っている。 「(5)計算環境の提供」については,(1)~(4)の成果を順次公開する準備ができている。 以上より,計算の加速化を主として,学術雑誌に投稿するとともに,国内研究会(北海道大学),国際会議(ISI2011:ダブリン・アイルランド,7thIASC-ARSConference:台北・台湾)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「9.研究実績の概要」に記した番号に従い,理由を述べる。 (2)の可視化手法と次元縮約手法および変数選択手法については,検討すべき手順や規準のパターンが膨大であるため,まだ十分な成果は得られていないが,(3)のインタラクティブ・インタフェースについては,プロトタイプが完成し,(4)の加速化については,新しい加速化が複数提案でき,実用場面での検討の段階に入っており,予定以上の成果が得られている。(1)の先行研究の分析や(5)計算環境の提供については問題なく行えている。 以上より,研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に計画通りの推進を予定している。研究最終年度となるが,「11.現在までの達成度」に示したとおり,(2)の検討に重点を置くことが必要になる。また,インタフェースに関しては,OSや機器の飛躍的な進歩があるが,(4)のプロトタイプで基礎ができており,Android OS(スマートフォン)用のシステム開発も視野に入れ,社会に役立つツールの提供をめざす。最終的には,現在,個別に検討している(2)と(4)の理論を(3)のシステムを媒介とした統合環境として提供していく研究を行う予定である。
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