2011 Fiscal Year Annual Research Report
HIV1逆転写酵素の転写エラー率制御によるエイズ治療法の基礎的研究
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22500273
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
原田 耕治 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40390504)
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Keywords | HIV-1 / エイズ / 数理モデル / シミュレーション |
Research Abstract |
HIV-1は、エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因ウイルスである。エイズ治療の困難さは、HIV-1の高頻度な突然変異、いわゆる"高変異性"に原因があるといわれている。この研究では、この高変異性を逆手に取りHIV-1を自壊させられないか検討する。つまり、HIV-1ゲノムに過剰な変異を起こし、遺伝情報を無意味化することを考える。では、どうやってHIV-1ゲノムに過剰な変異を起こさせるか?私は、HIV-1逆転写酵素が、HIV-1ゲノム合成の際、塩基置換の転写エラーを頻繁に起こす点に注目し、その転写エラー率を通常以上に高めることで、HIV-1を自壊させられないか検討する。 本年度は、HIV-1の突然変異率を制御することでHIV-1を自壊させることが可能かどうかを検証するため、HIV-1数理モデルを構築し、数値シミュレーション実験を行った。HIV-1数理モデルは、HIV-1の突然変異プロセス、ホスト(CD4+Tcell)細胞内での複製プロセス、ホスト細胞間の再感染プロセスを含み、また、HIV-1の種類としては、感染能力のあるものと欠如したもの、複製能力の高いものと低いものを考慮している。また、HIV-1の突然変異率を制御するため変異原の効果を取り入れている。HIV-1数理モデルは、HIV-1粒子数を変数とした非線形常微分方程式で記述されたポピュレーションダイナミクスである。数値シミュレーション実験において、変異原の効果を高め、HIV-1の突然変異率を高めていくと、ある突然変異率を境に、HIV-1粒子数が減少に転じることを明らかにした。これは、HIV-1の突然変異率を高めることで、HIV-1が自壊する可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、HIV-1の突然変異率を高めることによるHIV-1の自壊可能性について検討することを目的の一つとしている。本年度は、HIV-1が自壊する可能性があることを数値シミュレーションで明らかにすることに成功した。したがって本研究の目的の二部は達成されつつあると言える。ゆえに、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、実施すべき課題を挙げる。 1.今年度構築したHIV-1数理モデルにおいて、HIV1が自壊するパラメータ条件を明らかにする。そのために、状態の安定性解析を実施する。 2.HIV-1の突然変異の起源となるHIV-1逆転写酵素の転写エラープロセスを、今年度構築したHIV-1数理モデルに取り込む。
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