2011 Fiscal Year Annual Research Report
複合体立体構造データを利用した標的蛋白質に結合する化合物群の探索法開発
Project/Area Number |
22500274
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川端 猛 大阪大学, 蛋白質研究所, 招へい研究員 (60343274)
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Keywords | バイオインフォマティクス / 構造バイオインフォマティクス |
Research Abstract |
本研究は、標的蛋白質に結合する低分子化合物を、標的蛋白質の立体構造を利用して、化合物データベースから検索する手法を開発することを最終目的とする。本年度は昨年度開発した、二つの化合物の構造の最大共通部分化学構造(MCS)による原子の1対1対応を組み上げ法を用いて効率的に計算するプログラムKCOMBUをJ.Chem.Info.Model誌に発表した。また、KCOMBUのプログラムを用いて、二つの化合物の構造比較やPDB内の化合物の検索ができるWEBサーバの公開も始めた。このサーバからはKCOMBUのプログラムソースもダウンロードすることができる。本年度は、MCSによる原子対応を用いて、リガンドの結合立体構造の比較モデリングの試みを行った。この方法では、立体構造を予測したい標的化合物と、類似した鋳型化合物の結合立体構造が既知である状況を想定し、MCSにより二つの化合物の原子対応を求め、それら対応する原子ができるだけ重なるように、標的化合物を変形させながら、鋳型化合物に重ね合わせることで、標的化合物の立体構造を予測する。この計算のために、重ね合わせの良さなどを評価するエネルギー関数を導入し、より低いエネルギーとなるように化合物の二面角を変形させるプログラムを作成した。試験計算を行ったところ、標的-鋳型間の類似度が60%以上であれば、平均2Å以下の精度で予測できることがわかった。また、タンパク質キナーゼ族に属する約20種のタンパク質の阻害剤との複合体立体構造を、タンパク質を基準として重ね合わせることで、包括的な結合立体構造比較を行った。その結果、全てのキナーゼの阻害剤に共通する空間的特徴、ある群のキナーゼの阻害剤のみ有する空間的特徴の両方が観察された。これらの知見は、選択的に結合する阻害剤の設計、一残基置換による阻害剤の選択性の変化の予測などに貢献できると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の基本となる2Dの化合物比較法の開発は順調に進んでおり、実用的な性能を発揮できるプログラムに仕上がっていると考えている。当初予定していた化合物の立体構造の比較は、多くの化合物は精確な立体構造のデータがないことから、まだ本格的に取り組めていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、結合情報(2D構造)だけを用いた化合物構造比較を中心に行ってきた。立体構造情報を用いれば、より高精度の比較ができる可能性があると思われるが、化合物データベースには、立体構造データを欠く化合物のほうが多い。低分子化合物は、本質的にフレキシブルで、タンパク質に結合しない限り一つの構造に定まらないものが多いと思われる。化合物の立体構造の情報の不足を行うため、平成23年度からは、2D比較を利用して比較モデリングの手法で化合物の立体構造を予測する手法の開発に着手した。こうした予測立体構造をうまく使用することで化合物の立体構造比較を実現する方向で研究に取り組んでいきたい。
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Research Products
(3 results)