2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500279
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
作村 諭一 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特任准教授 (50324968)
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Keywords | システム生物学 / 生物形態 / 数理生物 / 統計解析 |
Research Abstract |
昨年度に完成した神経極性形成の定量数理モデルのプロトタイプについて、2つの側面から検証と解析を行った。まず、細胞が生成する力を推定するために、共同研究者の稲垣(奈良先端大)が観測した実験画像の解析を行った。生物実験では、微小なビーズが埋め込まれた培地を用いており、細胞が培地に力を加えるとビーズの位置が変化する。このようなタイムラプス画像が大量にあり、それからビーズの変移を計算機でハイスループット処理するためのアルゴリズム開発を行った。これにより、細胞がどの部分でどれだけの力を発生しているか、培養環境によってどのように変化するか計測することができる。一方で、神経極性の定量数理モデルを用いて、神経発達中における確率性の意義についてモンテカルロシミュレーションを行った。一般的に不規則性は生物にとって相応しくないと考えられているが、神経発達においては、不規則性が極性形成において重要である可能性を見出した。以上の結果はそれぞれ論文投稿中である。 細胞内のRhoファミリー低分子量Gタンパク質(Cdc42/Rac1/RhoA)の活性分布データと細胞運動に関する定量数理モデルの構築を行った。生体分子を中心とした細胞運動の数理モデルは、そのほとんどが分子活性と実際の細胞の動きの間に物理的制約を入れていない。本研究では、分子活性から力学過程を経て細胞形状の変化に至るモデルを立て、実験データ、すなわちCdc42/Rac1/RhoAそれぞれの分子活性度と実際の形状変化に関する数値を導入した。それにより得られる定量数理モデルは、実験データの再現性をある程度表現可能であることが分かった。現在、モデルの微調整と導入した仮定の検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経極性については新たに得られた結果を論文投稿段階まで進めており、Rhoファミリー分子と神経形態に関する研究では、昨年度のデータ解析から定量数理モデル構築まで大きく進歩した。
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Strategy for Future Research Activity |
神経極性については、投稿済みの2本の論文を採択段階まで進めるとともに、ビーズの変移データから力の推定アルゴリズムを完成させる。また、得られた力のデータを現在の定量数理モデルに適用し、モデルの完成度を高める。Rhoファミリー分子と神経形態については、定量数理モデルを完成させるとともに、論文投稿を行う。Rhoファミリー分子は力の生成とも関係するため、これらの統合モデルについて構築を開始する。
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