2010 Fiscal Year Annual Research Report
知覚のトップダウン機構:神経生理学を基礎とした動力学のシナリオ
Project/Area Number |
22500281
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
藤井 宏 京都産業大学, 名誉教授 (90065839)
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Keywords | 知覚のトップダウン機構 / 心的イマジェリー / レビー小体型認知症 / 擬アトラクター概念 / 皮質求心性アセチルコリン / ムスカリン様m2受容体 / 注意の三角経路 / シナプス前抑制 |
Research Abstract |
大脳皮質2/3層における、トップダウン注意に伴う皮質求心性アセチルコリンの過渡的な放出によるムスカリン性前シナプス抑制の存在について複数の報告がある(Salgado2008;Kruglikov2007)。そのシステム・レベルの動力学的帰結について、さらにそれに支えられている認知的側面への意味は殆ど論じられていない。しかし、ニューロン間の結合性の一時的な変更を通じて、皮質におけるメモリー痕跡、あるいはアトラクター景観に重大な影響を及ぼす可能性がある。われわれは以上の論点について皮質におけるアトラクター痕跡とそのトップダウン注意による一時的なアトラクターの構築という作業仮説を提出し、さらに皮質上層部(1、2/3層)における錐体細胞、介在細胞系の配置に留意しつつ、コンピュータ・モデルによってその実現可能性について論じた。また非線形動力学からの考察を基礎に一連の作業仮説を提出した。外部刺激の非存在下(=4層への入力がない),かつ注意に伴うトップダウンの流れがない(=1層へのグルタメートスパイク,および皮質求心性アセチルコリンがdefault水準を超えて過渡的に投射されていない)とき,内部の動力学的状態はアトラクター痕跡の形でのみ存在し,皮質ダイナミクスは痕跡間の不断の変転を示す。トップダウンの注意の流れはこの過程を一時的に逆転させ,断片としてのアトラクター痕跡をビルディングブロックとして過渡的にアトラクターを再構築する。 皮質1層へのトップダウン入力による抑制性1層細胞の過渡的興奮を通じ、皮質2/3層錐体細胞の脱抑制過程がデフォールト状態では擬アトラクタとして潜在的に存在している“局所アトラクタ”が活性化する。以上は、注意に関するA.Treisman理論、およびゲシュタルト心理学と共鳴する。また、最近のケネットらの実験の力学系的な解釈と機序に関する新仮説を含む。
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Research Products
(2 results)