2011 Fiscal Year Annual Research Report
知覚のトップダウン機構:神経生理学を基礎とした動力学のシナリオ
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22500281
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
藤井 宏 京都産業大学, 名誉教授 (90065839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 浩之 京都産業大学, コンピュータ理工学部, 教授 (80201929)
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Keywords | 知覚のトップダウン機構 / 心的イマジェリー / レビー小体型認知症 / 皮質求心性アセチルコリン / 擬アトラクター概念 / ムスカリン性受容体 / ムスカリン性前シナプス抑制 / アトラクター景観の変形 |
Research Abstract |
大脳皮質2/3層において、トップダウン注意に伴う皮質求心性アセチルコリンの過渡的な放出によるムスカリン性前シナプス抑制について(Salgado 2008;Kruglikov 2007)そのシステム・レベルの動力学的帰結、および、それに支えられている認知的意味を論じた。本研究の第一段階として、知覚のトップダウン機構の一つとして純粋に内的な心的過程である心的イマジェリーの機序を非線形力学系からの考察を基礎に一連の作業仮説を提出し、数値シミュレーションによって議論の妥当性を示した。 外部刺激の非存在下(=皮質4層への入力がなく),かつ注意に伴うトップダウンの流れがない(=1層へのグルタメートスパイク,および皮質求心性アセチルコリンがデフォールト水準を超えて過渡的に投射されていない)とき、皮質内部の動力学的状態はアトラクタ痕跡の形でのみ存在し,皮質ダイナミクスは痕跡間の不断の変転を示す。トップダウン注意の流れはこの過程を一時的に逆転させ過渡的にアトラクタを再構築する。(1)デフォールト水準を超えて過渡的・局所的にに投射される皮質求心性アセチルコリンが、皮質2/3層錐体細胞への抑制性ニューロンからの抑制を減少させ(前シナプス抑制の減少)、その結果としてデフォールト状態では擬アトラクタとして潜在的に存在している"局所アトラクタ"が活性化する。このアセチルコリン投射は、系の状態遷移を惹起こすいわば分岐パラメータとみなせる。(2)同時に、注意の脳内過程として皮質1層へグルタメート・スパイク投射が、システム状態(系の軌道)を特定のアトラクタへジャンプさせる。これは系への外的な力として働く。本研究の概要とシミュレーション結果の速報を、ICCN 2011 国際会議(ニセコ、日本)、ICNAAP2011 国際会議(Halkidiki、ギリシャ)において行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1の研究段階として純粋に内的な脳内過程である心的イマジェリーの機序について、皮質求心性アセチルコリンの分岐パラメータとしての役割に注目しつつ、従来の立場と異なった新しい仮説を提案した。また、数値シミュレーションによる妥当性の検証を行った。今後、本研究を基礎に研究者による議論を期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
レビー小体型認知症における視覚的幻覚は、皮質内のアセチルコリンの大幅な減少と明確な相関をもつ。(Perry & Perry 1995; Collerton 2005)。このような症状は、脳(皮質)-視覚感覚皮質、側頭皮質および、前頭前野皮質間のネットワークのダイナミックな側面(の不全)に依存するが、その中でムスカリン受容体、ニコチン受容体の活性の減少がいかなる機序によってこのような"偽の"主観的感覚を与えるのか?現在までの第一段階の知見を基礎に、本年度は全体的な枠組みを構築し、次年度における数値シミュレーションへの準備とする。
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Research Products
(9 results)