2010 Fiscal Year Annual Research Report
RNA結合蛋白PTBによるスプライシングを介した神経分化制御機構の解明
Project/Area Number |
22500286
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 進昭 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10250341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 暁憲 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70549451)
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Keywords | ES細胞 / 発生工学 / mRNA splicing / PTB / 神経発生 |
Research Abstract |
中枢神経系を構成する様々な細胞は増殖能及び多分化能を有する神経幹細胞より生み出される。そのため神経幹細胞からの分化メカニズムの解明は生物学的研究意義に加え神経疾患に対する再生医療という観点からも重要な課題である。近年、転写因子群による神経分化制御機構以外にRNA修飾による制御が重要な働きを担っている事が示唆されており、その機構解明が望まれる。我々がES細胞の未分化維持因子の一つとして同定したPTBは、RNA recongnition motifを持ち、標的pre-mRNAのpolyprimidine領域に結合してmRNAのSplicingを制御するRNA修飾因子である。神経系においては神経幹細胞/前駆細胞に限局して発現するが、PTB欠損マウスが着床前後で致死となった事からPTBコンディショナルノックアウトマウス(cKOマウス)の作製を行った。Nestin-Creマウス(神経組織特異的にCreを発現)との交配によりPTB cKOマウスの中枢神経系での解析を行った。(1)PTB cKO/Nestin-Creマウスが生後に重篤な水頭症を発症する事を見出しだ。また胎生後期(E15.5)よりPTB cKOマウスの前脳(大脳皮質)領域において、脳室周囲に存在する未分化細胞(神経幹細胞)の細胞間接着や細胞極性に異常が認められており、その結果、水頭症を発症している事が示唆された。(2)PTB欠損細胞ではパラログ遺伝子であるnPTB遺伝子の発現が亢進しておりnPTBがPTBと相補的に働く可能性が示唆されたためnPTB cKOマウスを作製した。nPTB cKOマウスは産後に呼吸不全を起こし死亡する事から脳幹部の異常が予測された。また生後解析を目的にEmxl-Creマウス(大脳皮質領域のみでCreを発現)との交配を開始した。(3)神経分化依存的mRNA splicing制御の可視化を目的にPTBに応答する蛍光レポーターマウスを作製した。これらの遺伝子欠損実験によりPTB/nPTBが神経系の発生過程に於いて重要な機能を有している事が考えられる。
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