2011 Fiscal Year Annual Research Report
発生期の脳組織中で神経幹細胞の維持と分化を制御する機構の解明
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22500289
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 綾乃 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90360528)
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Keywords | 神経幹細胞 / 単一細胞cDNA / 大脳発生 / 神経分化 |
Research Abstract |
哺乳類大脳の発生過程で、神経幹細胞の維持と分化のバランスは発生時期に応じて変化することが知られている。そのバランス変化を来す要因として、神経幹細胞の遺伝子発現パターンの経時的な変化が考えられる。これまでの研究で得られた単一細胞由来cDNAのマイクロアレイデータを基に、各発生段階において、神経幹細胞の細胞集団がどのようにして遺伝子発現パターンを変化させるのかを詳細に解析した。その結果、(1)神経幹細胞の遺伝子発現の変化を、2次元上で分化軸と時間軸とに分離し記述できることが分かった。パスウェイ解析の結果、分化軸の構成成分はNotchシグナル経路であるが、時間軸の構成成分の中に特徴的な既知のシグナル経路は抽出されなかった。一方、(2)各発生段階の神経幹細胞の遺伝子発現プロファイルを比較し、神経幹細胞内での時間軸変化を代表する遺伝子セット(21個)を同定した。(1)と(2)の清報を利用して、Notchシグナルを人為的に常に活性化した状態での神経幹細胞内での時間軸方向の遺伝子発現変化を検討した。その結果、活性型Notch存在下で強制的に神経幹細胞の未分化性を維持させた場合においても、神経幹細胞内での遺伝子発現パターンは経時的に変化していることが明らかとなった。このことは、時間軸方向への発現変化に関わる機能を調べたい遺伝子が同時に分化にも関係していて従来の解析では困難と思われた場合でも、活性型Notchと共発現させて解析することができることを示唆している。そこで、本条件下で初期胚へのエレクトロポレーション法による遺伝子導入を行い、前駆細胞で発現する遺伝子や細胞周期関連分子が、神経幹細胞の時間軸に沿った遺伝子発現変化に、どのような影響を及ぼしているのかの検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経幹細胞の未分化性の維持や、経時的な遺伝子発現パターン変化に関与する可能性のある遺伝子群について、その機能解析には初期胚への遺伝子導入が必要であるが、得られるサンプル数が実験の回数に対して少なく、当初予定していたよりも実験の遂行に時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
初期胚へのエレクトロポレーション法による遺伝子導入後に得られるサンプルが少ない問題は、実験手技の改良と、新たな施術者の確保により改善をおこなっており、ある程度定期的にサンプルを得られるようになってきている。この手法を用いて、今後は神経幹細胞の遺伝子発現変化へ影響する因子について、特に細胞周期進行に関わる因子に注目し、過剰発現およびノックダウン実験を行い検討する予定である。
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Research Products
(2 results)