2010 Fiscal Year Annual Research Report
電子スプレーで生細胞にあらゆるナノ分子を定量的・非損傷的に注入する技術の開発
Project/Area Number |
22500302
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
ヴィゴ レジャン 独立行政法人理化学研究所, Launey研究ユニット, 研究員 (20470304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LAUNEY THOMAS 独立行政法人理化学研究所, Launey研究ユニット, ユニットリーダー (30322704)
千村 崇彦 独立行政法人理化学研究所, Launey研究ユニット, 客員研究員 (90392034)
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Keywords | Molecular and cellular neuroscience / Molecular and cellular neurobiology / Neuron, synapse, and neural circuit / Neural plasticity / Neurotransmitters and receptors |
Research Abstract |
特定の生細胞に機能分子を導入するため、本研究課題では内外2本のガラスピペットで構成される電子スプレーを用いる。導入する分子は液体に溶解し内側ピペットに充填する。 研究の第一段階として、この装置から電子スプレーを発生させる理論モデルを構築、多様なパラメターの各々につき予想される最適値の範囲をシミュレーションで割り出した。次に試作機を作成、高電圧供給電源(0-2kV,0-0.4A)を購入し、(1)低ノイズ電流電圧変換器でスプレーの電流値(10^<-12>-10^<-8>)を精確に測定、(2)蛍光液を充填した本機を落射蛍光顕微鏡の対物レンズ焦点に配置し、スプレーの発生を高解像度で観察、(3)電子スプレー処理中の生細胞を良好な状態に保つ条件(温度・無菌性等)を確立した。 また実験の過程で次の2点の重要性が判明した;(1)スプレー中に生じるピペット内の伝導性物質の蓄積を防ぎ、内側ピペットの電気的絶縁を保持すること。電子スプレーはピペット内外の溶液の電圧差によって生じる。従って、ショートを防ぐには絶縁の維持は必須である。外側ピペットの内側面を疎水性パラフィンの薄膜で覆い、ピペット内を窒素ガスで陽圧にすることにより伝導性物質の蓄積は緩和したが、高電圧をかけた際のショートを回避することはできなかった。(2)安定かつ予測可能なスプレー電流を得るため電圧パルスを適切に設計すること。当初試みた一定電流では、0.4kV以下ではスプレーが発生せず、0.4kV以上に上げても安定した電流は得られなかった。そこで定電流と正弦曲線の交流電流とを組み合わせたところ、より弱い電圧(0.1-0.5kV)で5-15nAのスプレーを数時間にわたり維持することに成功した。この手法には標的に導入する物質の量を容易に制御できるという利点もある。 これらの知見を踏まえ、ピペット-細胞間の距離を最適化し、絶縁破壊を完全に防ぐよう設計を再検討中である。
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