2010 Fiscal Year Annual Research Report
巧緻な運動制御の基盤となる運動関連皮質の生後発達の神経解剖・神経生理学的研究
Project/Area Number |
22500309
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮地 重弘 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (60392354)
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Keywords | 神経回路網 / サル / 発達 / 運動皮質 |
Research Abstract |
霊長類の前頭葉皮質にある複数の運動関連領野の生後発達、機能分化の過程を明らかにすることが本研究の目的である。とくに、Graziano(2002)らが報告している、長い刺激トレインによる運動皮質の電気刺激が複雑な運動を誘発する現象に注目し、このような現象が、生後間もない幼若個体においても生じるか、生後の発達に従って生じてくるのかを確認し、また、このような運動の生成に関与する神経回路を解剖学的に検索する。平成22年度においては、電気刺激実験の手技の確立および、成熟個体でのデータ収集を主な目標とした。 成熟マカクサル1頭について、中心溝前方の前頭葉皮質一次運動野の電気刺激を行ない、誘起される運動を観察した。実験に先立ち、頭蓋骨にヘッドホルダーを装着した。また、前頭葉の刺激部位上の頭蓋骨を切除し、硬膜を保護するためのプラスチック製チェンバーを取り付けた。電気刺激実験は、ケタミンによるごく軽度の麻酔下、ヘッドホルダーにより頭部を固定して行なった。運動野のマッピングに広く用いられている短い刺激トレイン(50ms)で刺激した場合は、概ね20μA程度の閾値で単関節の運動が誘発された。これに対し、Grazianoらの用いた長い刺激トレイン(500ms)では、複数の関節の協同した複雑な運動が観察された。ただし、腕の初期位置に関わらず空間内の特定の点に向かって手を伸ばすような運動は見られなかった。これらの実験結果により、ケタミンによる軽度麻酔下での電気刺激でも、Grazianoらの報告したような複雑な運動がある程度誘起できることが示された。このことは、今後トレーニングの困難な幼若個体を用いた実験を行なう上で非常に重要な知見である。
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