2011 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質興奮性神経細胞の軸索形成過程と皮質間線維の発達過程の解析
Project/Area Number |
22500310
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
畠中 由美子 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 特別協力研究員 (40271548)
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Keywords | 神経科学 / 発生・分化 / 解剖学 / 細胞・組織 / 大脳新皮質 / ライブセルイメージング / 細胞移動 / 神経回路 |
Research Abstract |
大脳皮質では皮質外領域に投射する線維に加え、同側・対側皮質問の領域を結ぶ線維が非常に発達している。これらの線維は主に興奮性神経細胞に由来しており、結合様式から連合・交連線維に分類される。神経機能を発揮する上でこれらの線維結合は重要であるが、その複雑さのため、特に皮質問線維の形成と発達には未解明な部分が多く残されている。そこで本研究では、まず、興奮性神経細胞の初期軸索形成過程を調べ、さらにその後の発達過程を解析して、皮質問結合の形成メカニズムを明らかにすることを目指している。本年度は昨年度に引き続きスライス培養系を用いたタイムラプスイメージングの実験をすすめた。その結果、分化した深層の神経細胞が、中間帯で多極性細胞に変化し、複数の神経突起を伸縮させること、次いで一本の突起を急速に中間帯内に伸長させること、そしてこの突起が軸索となることを明らかにした。これまで海馬神経細胞の分散培養系では、多極性細胞が突起伸縮を繰り返した後、軸索を形成することが知られていたが、実際の組織の状態に近いスライス培養系でも同様な細胞ダイナミクスを介して軸索形成が観察されたことは、新たな発見であり神経細胞の極性形成を考える上でも重要な知見である。この結果をまとめて論文とした。他の中枢系神経細胞では、神経上皮細胞の極性や、移動時の極性を引き継いで軸索を形成することが報告されている。一方、今回の結果は、興奮性神経細胞は神経細胞へ分化後に新たに軸索形成のための極性を獲得していることを示唆している。そこで、これら神経細胞間の軸索形成過程を比較考察して総説とした(in press)。また、その後の皮質興奮性神経細胞の軸索の発達を解析するため、細胞の標識時期を変化させて深層神経細胞以外にもマーカー遺伝子の導入を行い、このときに標識される細胞タイプと、その後の軸索投射パターンの関連性の解析について実験を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題として掲げた2つの項目のうち、軸索形成の初期過程については解析を終え論文にまとめて報告した。次の軸索投射の形成過程についても解析が軌道にのり始めたため。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な時期の標識の結果から、すでに軸索投射パターンには標識時期に応じたルールが存在することを予想している。現在、皮質間の軸索投射パターンの解析の方法について試行錯誤した結果、ほぼ解析方法が定まったところであり、今後は予定どおり皮質問結合の具体的な解析を勧める予定である。
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Research Products
(5 results)