2011 Fiscal Year Annual Research Report
小脳プルキンエ細胞が複雑かつ秩序立った形態の樹状突起を形成する分子機構の解析
Project/Area Number |
22500312
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田中 正彦 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 准教授 (60267953)
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Keywords | プルキンエ細胞 / 樹状突起 / 小脳 / siRNA / 単一細胞エレクトロポレーション / 細胞培養 / 切片培養 / 形態形成 |
Research Abstract |
小脳のプルキンエ細胞は、脳内で最も複雑な樹状突起を形成する。その形態は単に複雑であるだけでなく、非常に秩序立った構造をとる。本研究では、その樹状突起形成の分子機構の理解を進めるために、小脳培養系における単一細胞エレクトロポレーションを用いたsiRNA導入などの独自の実験系を生かした研究を行う。 昨年度に、小脳細胞培養系中のプルキンエ細胞に対して樹状突起形成に関与すると予想される様々な遺伝子(細胞内カルシウム放出チャネル、シグナル伝達分子のアダプター蛋白質、蛋白質リン酸化酵素、蛋白質脱リン酸化酵素調節因子、輸送蛋白質、細胞骨格蛋白質)のsiRNAを単一細胞エレクトロポレーションを用いて導入し、樹状突起形成が抑制される例を見出した。今年度は、新たな遺伝子(別種の蛋白質リン酸化酵素や開口放出調節因子など)のsiRNA導入を試みるとともに、複数のsiRNAの共導入による複数分子の同時発現抑制を行って単一分子の発現抑制効果と比較した。その結果、特にリアノジン受容体の発現抑制と、CaM kinase IIα,IIβ,IVの同時発現抑制によって樹状突起形成が抑制されることを見出した(CaM kinase IIα,IIβ,IVのそれぞれ単一分子の発現抑制では影響が見られなかった)。リアノジン受容体については、プルキンエ細胞だけでなく顆粒細胞で発現している受容体の寄与を示唆する実験結果も得られたため、その詳細を来年度に解析する予定である。 また、単一細胞エレクトロポレーションによる発現プラスミド導入条件の最適化を進めるとともに、樹状突起の伸長方向や選択・淘汰の分子機構解析のための小脳切片培養系と分散プルキンエ細胞との共培養実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに様々な遺伝子の発現抑制を行い、樹状突起形成に影響を与える遺伝子を見出すことに成功した。さらに、単一分子の発現抑制では効果がないにもかかわらず、複数分子の同時発現抑制によって効果が現れる例も見出した。また、単一細胞エレクトロポレーションによる発現プラスミド導入や、樹状突起の伸長方向や選択・淘汰の分子機構解析のための実験系の確立も進んでいる。このように、研究計画の主要部分は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
複数分子の同時発現抑制について、さらに多くの組み合わせを試す。リアノジン受容体については、プルキンエ細胞だけでなく顆粒細胞で発現する受容体もプルキンエ細胞樹状突起形成に寄与するという発見が大変興味深いため、両者の寄与のしかたについて詳細な解析を行う。また、リアノジン受容体の下流で働くカルシウムシグナル関連分子について明らかにする。 さらに、単一細胞エレクトロポレーションによる発現プラスミド導入や、小脳切片培養系と分散プルキンエ細胞との共培養実験系を利用した樹状突起形成機構解析を開始する。
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