2011 Fiscal Year Annual Research Report
網膜神経細胞の3次元再構築による形態的分類とシナプス結合の解析
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22500317
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
塚本 吉彦 兵庫医科大学, 医学部, 名誉教授 (20104250)
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Keywords | 神経科学 / ニューロン / 網膜 / 神経回路 / シナプス / マウス / サル / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
(1) [目的]マウス網膜の連続切片電顕写真からすべての型の双極細胞と狭い受容野をもつ型のアマクリン細胞の分類とシナプス結合に関する知見を集大成し、それらを公表する。 [成果]A)マウス網膜については、杆体視細胞→杆体双極細胞→AIIアマクリン細胞の経路に続いて、AIIアマクリン細胞からON双極細胞へのギャップ結合、OFF双極細胞とOFF神経節細胞へのシナプス経路を解明した。とくにAIIアマクリンと全ての型(5α,6,7,8,9)のON型双極細胞とのギャップ結合の撮影に成功した。国内の学会発表を終えた後に、原稿を米国の元同僚の研究者に校閲を依頼してコメントを得た。現在、原稿の完成度を上げる作業中である。B)シリーズに存在する30個の神経節細胞のマップを作成した。そのうち10個の神経節細胞については双極細胞とアマクリン細胞の各型からの入力の組み合わせによって性質を明らかにした。 (2) [目的]サル網膜の中心窩と周辺野の2シリーズの連続切片電顕写真を追加撮影によって完成させ,錐体細胞,杆体細胞のマップ作りから始めて,双極細胞,アマクリン細胞,神経節細胞の分類とシナプス結合を解析する。 [成果] A)サル網膜については、立体構築のための準備として錐体マップ、杆体マップを作成した。B)さらに網膜全体の電顕像をポスター用の大判プリント紙に印刷し、透明紙(特注品)にグリッド線とともに大きな目標物の輪郭を写し取って座標フレームを作った。周辺野シリーズ用116枚、中心窩シリーズ用134枚をそれぞれ完成させた。 (3) [目的]コンピューター・グラフィックスのツールを整備する。[成果] A)現在使用しているソフトウエアTRI/3D-SRF-R(ラトック社)に特注によってSLT形式(CAD分野の標準的なファイル形式で汎用性が極めて高い)のファイル生成機能をもたせることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年3月をもって兵庫医科大学を定年退職したが、名誉教授として当大学の一構成員の資格を得ている。大学の図書館ならびに共同利用研究施設(電子顕微鏡を含む)の使用を継続している。また、大学近辺に賃貸住宅を借用して電顕写真シリーズを解析するためのスペースを確保している。連続写真の解析によって、この方法でしか得られない新しいデータが集積されて来ているので、他の研究者による公表データとの関連を付けながら論文を作成することは十分に可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、NIHのHuman Connectome Project(ヒト脳の全神経結合網の解明)を始め、神経結合網の形態学的・包括的検索が神経科学の中で注目される課題の一つになっている。多くの研究グループがこの分野に参入してきているが、蛍光標識、共焦点レーザー顕微鏡の進歩とコンピューターの情報処理能力の向上を結び付けたものが主流で、解像力の点では光学顕微鏡レベルのものが多い。化学的、電気的シナプスの3次元分布の同定には電子顕微鏡レベルが必要であることは依然として不変である。私はマウスとサルの網膜の連続電顕写真シリーズを保有しているが、その資源的希有さを最大限に生かして独自性の高いデータを公表していく。マウスに関して最初に集大成し、その知見、教訓を生かして次にサルの集大成を図るのが基本的な方策である。今後、マウス網膜については杆体-錐体から脳へ信号を出力する神経節細胞に集約されるまでの神経回路の解明をサル網膜と比較しながら進めることが重要である。サル網膜についてはマウス網膜と対照させながら杆体系の高感度信号経路、錐体系の高分解信号経路、二層性の反対色信号経路の3経路の解析が課題である。
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Research Products
(3 results)