Research Abstract |
今年度我々は,グリオーマ組織内tumor-associated macrophages(TAM)に関して,昨年度から継続してS100β-v-erbBトランスジェニックラット発症グリオーマ組織を検討し,今年度は画像解析による定量的検討と統計学的解析を行い,悪性度の高いグリオーマでTAMの活性化が優位に強いという興味深い成果が得らえた.さらにヒト悪性グリオーマとの比較検討を行い,ヒトグリオーマとの共通性と違いが見出され,その結果の一部をシドニー大学でのセミナーで発表した. 具体的には,同ラット11個体に発生した13の脳腫瘍を研究対象とし,腫瘍の内訳は、anaplastic oligodendroglioma(AO)5, malignant glioma(MG) 4,low-grade astrocytoma(AS) 4であった.免疫組織化学的検討は,一次抗体として,Iba1,ED1(CD68),ED2(CD163),SRA-E5(CD204),SP6(Ki-67)を用いた.Iba1およびSP6染色標本では,画像解析ソフト(Win Roof)を用いて定量的解析も施行し,統計処理を行った.AO症例ではIba1とSP6の蛍光二重染色も行った。 その結果,AOとMGの全例で,多数のIba1陽性活性型ミクログリア/マクロファージが腫瘍組織内に認められた.AO4例で単位面積あたりのIba1陽性細胞占有面積を定量的に解析したところ,腫瘍組織内部と腫瘍境界部は非腫瘍部と比較して優位に増加していた(P<0.05).蛍光二重染色では,Iba1/SP6のdouble positive細胞が少数認められ,TAMは腫瘍組織で増殖能を有することが示された. 腫瘍組織内部においては,Iba1陽性細胞占有面積とKi-67陽性率には正の相関関係が認められた.さらに,Aoでは、Iba1陽性TAMが微小血管増殖部で増加しており,グリオーマのニッチとTAMの関連が示唆された. AOやMGの腫瘍組織内壊死巣では,Iba1陽性,CD204陽性の貪食マクロファージが観察されたが,CD163やCD204陽性のM2タイプのTAMは少数であった.ヒトグリオーマの解析では多数のM2タイプTAMが認められており,ヒトとラットの種差による違いの可能性が考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
・S100β-v-erbBトランスジェニックラット発症グリオーマに関しては,M2タイプTAMの定量的解析を行い,ヒトグリオーマとの違いに関するより客観的データを求めて行く. ・上記の実験ラットグリオーマの治療実験に向けてさらなる基礎データの集積を行っていく. ・ヒトグリオーマでのTAMのマーカー,特にM2タイプのマーカーであるCD163とCD204を中心に,その発現率とグリオーマ予後との相関解析を施行する.
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