2011 Fiscal Year Annual Research Report
変性オリゴデンドロサイトによる神経細胞α-synuclein蓄積の抑制の検討
Project/Area Number |
22500326
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
矢澤 生 独立行政法人国立長寿医療研究センター, バイオリソース研究室, 室長 (20312217)
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Keywords | α-synuclein / 多系統委縮症 / オリゴデンドロサイト / モデルマウス / 神経変性 / グリア細胞封入体 / 初代培養 / 神経変性治療 |
Research Abstract |
オリゴデンドロサイトにα-synucleinが蓄積して神経変性を起こす多系統萎縮症(MSA)は治療法が確立していない神経難病である。過去の研究成果では変性したオリゴデンドロサイトが神経細胞の変性誘導する機序を解明した。オリゴデンドロサイトで特異的にヒトα-synucleinを強制発現するトランスジェニック(TG)マウスを作製し、GCIなどのMSAの病理組織学的特徴を有する疾患モデルとして報告した。TGマウスでは運動機能の低下や脳萎縮、神経細胞の脱落が観察され、変性したオリゴデンドロサイトが神経細胞の変性を誘導することを示した。さらに、TGマウス脳由来の初代培養細胞に関する研究によりTGマウス脳神経細胞に蓄積するα-synucleinはMSA患者脳に起こる病的不溶化を示すことを示し、α-synucleinと同様に不溶化を起こす蛋白として微小管の構成蛋白であることを示した。本年度は、神経細胞変性の原因となるα-synuclein蓄積を治療標的として治療研究を行った。初代培養細胞等のin vitro研究で解明したα-synuclein蓄積の抑制結果から、MSAモデルマウス個体での抑制効果を検証し、マウス個体の神経変性に有効であることが分かった。本年度はマウス個体に1年間、抑制効果を期待する候補物質を投与し、不溶性α-synucleinやマウス脳萎縮の程度などにより評価を行った。本研究成果はフランスにて開催された第4回多系統萎縮症国際コングレスにおいて招待講演として報告し高い評価を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多系統萎縮症に対する治療法開発について疾患モデル動物を用いて発病機構に関する研究と治療法開発を実施し、第4回多系統萎縮症国際コングレスにおいて世界的なレベルでも方向性に誤りのないことが確認された。本年度は、既に米国で治験が進んでいるリファンピシンについて我々のモデル動物について検討し論文として報告した。今後はより効果的な新しい治療標的を明らかにし、新たな治療法開発に取り組む。また、治療研究については国際協力を行い、欧米の研究者との協力体制の構築に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
多系統萎縮症の治療標的となりうる病態プロセスは、α-synucleinと微小管蛋白との結合であることを明らかしたことから、結合を抑制する候補となる物質について検討を進める。複数の候補物質の中から、モデルマウスにおいて1年間投与し不溶化α-synuclein蓄積を減弱させ脳萎縮を抑制する効果のある物質を特定する。また、更に病態メカニズムを解明し、他の治療標的についても検討を重ねる。具体的にはα-synuclein蓄積誘導因子などを考える。
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Research Products
(11 results)