2011 Fiscal Year Annual Research Report
βーアミロイドによるニューロン新生阻害機構の解明とその防御
Project/Area Number |
22500347
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
内田 洋子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 主任研究員 (60133633)
|
Keywords | β-アミロイド / 神経新生 |
Research Abstract |
「β-アミロイド(Aβ)が胎児性蛋白を誘導するだけではなく、神経幹/前駆細胞の増殖や新生ニューロンの生存を阻害するため、ニューロン新生が抑制される」という作業仮説を証明するのが本研究の目的である。そこで、網羅的遺伝子解析から得られた、Aβによって誘導され、神経幹/前駆細胞や幼弱ニューロンで発現する遺伝子(7種類)から、細胞の増殖や新生ニューロンの生存を阻害する遺伝子の同定を試みてきた。対象となった7遺伝子それぞれをEYFPとともに培養神経幹/前駆細胞や培養ニューロンに遺伝子導入し、細胞の増殖とニューロンの生存への影響を調べた。その結果、ただ一種類(Sh2d3c,Cas/HEF1-associated adoptor protein,Chat)がニューロンの生存を阻害すること、しかし、他のすべては、細胞増殖やニューロンの生存を阻害しないことがわかった。そのため、以降、Chat(Sh2d3c)に的を絞り、実験計画を実施した。ChatのC-末端は、CAS family proteinに結合する。Chatの過剰発現がニューロンの生存を阻害するためには、ChatのC-末端が必要であったため、ニューロン生存阻害作用はChat-Cas結合を介していると考えた。CAS family proteinのうち、p130CasとNEDD9が神経系でも発現している。p130Casは成熟に多く分布するのに対し、NEDD9は胎児脳に主として分布する。そこで、Chatの結合相手によってニューロン生存阻害作用が変化するかどうかを調べた。しかし、Chat-p130Cas、Chat-NEDD9のどちらを共発現させてもニューロンの生存は阻害されなかった。以上のことから、ニューロンの生存阻害には、ChatのC-末端にCas family protein以外の分子(未知)の結合が必要であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の実施自体はおおむね順調である。しかし、候補遺伝子7種類のうち、目的に合致するものは一種類のみであった。また、同定した遺伝子の作用機序がかなり複雑であるため、目的の達成までにはクリアしなければならない課題がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
Aβによって誘導される新生ニューロンの生存を阻害する遺伝子としてChatを同定した。しかし、Chatの新生ニューロンの生存阻害機序を明かにするためには、Cas family protein以外のchat結合分子の探索・同定が必要となった。
|