2011 Fiscal Year Annual Research Report
錐体細胞付随性グリア細胞によるニューロン活動に対する修飾効果の機序の解明
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22500352
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山崎 良彦 山形大学, 医学部, 准教授 (10361247)
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Keywords | 海馬 / グリア / 錐体細胞 / 活動電位 / 発火周波数 / CA1 |
Research Abstract |
1. 昨年度の研究により、細胞体にグリア細胞が付随している錐体細胞と付随していない錐体細胞との間で、形態学的・電気生理学的な性質に違いがあることが示唆された。本年度では、その違いについて定量的解析を行った。静止膜電位や入力抵抗には、優位な差はみられなかった。活動電位の発火頻度について検討したところ、グリア細胞が付随していない錐体細胞では、電流注入による活動電位の最大発火頻度が、初期相では79.3±0.9Hz、定常相では31.1±2.3Hz(n=16)であった。これに対し、グリア細胞が付随している場合では、初期相で69.5±1.8Hz、定常相で27.3±2.1Hz(n=9)の発火周波数を示し、初期相において優位に小さい発火頻度を示すことがわかった。定常相での発火周波数も小さい傾向がみられたが、統計学的優位差には至らなかった。これらのことから、付随性グリア細胞はニューロン発火に対しconstitutiveに影響を与えていることが示唆された。 2. 錐体細胞と付随するグリア細胞より同時にホールセル記録を行い、付随性グリア細胞の膜電位を操作したときの錐体細胞発火に対する効果を調べた。これまでの研究により、介在ニューロン付随性オリゴデンドロサイトと介在ニューロンとの組み合わせにおいて、オリゴデンドロサイトの過分極により介在ニューロン発火頻度の抑制がみられることがわかっているため、錐体細胞付随性グリア細胞を段階的に過分極させたが、錐体細胞の発火頻度には変化がみられなかった。しかし、付随性グリア細胞を脱分極すると、発火頻度が約10%増大することがわかった。グリア細胞による活動電位発火に対する修飾効果を直接的に示したものであり、神経回路網の情報伝達におけるグリア細胞の新しい関与形態を期待させる結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
錐体細胞と付随性グリア細胞からの同時ホールセル記録を用いたグリア細胞によるニューロン活動に対する修飾効果の検討について、当初の計画より早く取り掛かることができ、さらに修飾効果の存在を検出することができた。しかし、抗体染色を用いたグリア細胞のサブタイプの同定にはまだ至っていないので、平成24年度にはこの点を重点的に行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 付随性グリア細胞に注入したバイオサイチンに対する蛍光染色と、CNAase、MBP、NG2、GFAPに対する抗体を用いた染色を行い、記録した記録したグリア細胞のサブタイプを同定する。 2. 本年度の研究により、付随性グリア細胞の脱分極による発火頻度の増大を観察することができた。今後は例数を重ねていき、統計学的検討結果を示せるようにする。また、その促進効果の機序ついては、錐体細胞の後過分極(afterhyperpolarization : AHP)へのグリア細胞の影響が考えられる。グリア細胞の膜電位操作によるAHPの変化を検討し、促進効果の機序を解明する。
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Research Products
(5 results)