2012 Fiscal Year Annual Research Report
社会行動を利用したモルモット音弁別の音響および神経基盤
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22500368
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小島 久幸 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (00104539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀川 順生 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50114781)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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Keywords | 音識別 / 自然音 / 条件付け / モルモット / 音響要因 / 膜電位感受性色素 |
Research Abstract |
平成22年度と平成23年度にかけて特定音への条件付けとその識別実験に成功した。その際従来モルモットで行われてきた痛み等の不快刺激ではなく餌を強化因子として、また動物の社会行動を利用することにより約2週間でオペラント条件付けを安定して成立させることが出来るようになった。この条件音に対して96%の反応行動をおこす条件下で、その周波数と時間構造に関して変調した標的類似音を用いて行動誘発を調べたところ、周波数情報と微細な時間構造を手がかりにして音を認識していることが分かった。大きな秒単位の時間構造はこの条件下では重要ではなかった。この結果を誌上発表した(PLos One, 2012.12.10)。音を識別する際の脳活動を時空間的に解明するため共同実験者と膜電位感受性色素を用い、ナイーブ対照群と訓練条件付け群の間で、条件音とその時間軸に逆転した音に対する脳活動を調べた。その結果条件音と時間反転音による脳活動には顕著な差が生じること、この差は対照と訓練群間で優位であることが見いだされ、国際学会(ARO; USA, 2013.2.17)にて発表した。時間軸に反転した音は自然界では生じることはなく、かつまた構成周波数的には条件音とまったく同一であることから、両群間での条件音と時間反転音の差が異なることが、訓練による聴覚皮質回路の可塑的な変化に由来する可能性を主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ある自然音に対して条件付けが完成し特定の行動を引き起こすようになった際には。その際シナプス結合のウェイトが変化するすると同時に、新しいシナプス結合の形成と古い結合の刈り込みが生じている可能性がある。本実験では2週間程で条件付けが成立することを考慮すると後者の可能性が高く、条件音を識別する皮質ネットワークが条件付け音に最適化していると考えられる。それ故条件音の時間逆転音を与えた場合、例え周波数構造が両者で同一であっても異なる活性化が生じることが推定される。事実常に条件付け音による活性化が時間反転音を刺激とした際の活性化より強いことを確認した。しかし両音刺激は時間構造が異なるため、この違いによって活性化の差が生じる可能性を排除できない。従って訓練を受けないナイーブな動物において両刺激音を与え皮質活動を調べた。その結果ナイーブ群でも両音刺激による活性化は異なっていた。しかしながら本実験では、訓練群での両音刺激による活性化の”差”がナイーブ群での”差”より優位に顕著であったことが統一して見いだされた。このことが何を意味しているかは更なる実験を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの実験では、条件音とその時間反転音刺激による聴覚皮質の活性化の差が、訓練群においてナイーブ群より優位に顕著であることが判明した(ARO; USA; 2013.2.17発表)。すなわち訓練群では時間反転音に対しての活動は著しく低下していた。今後の実験ではその機序を明らかにしていきたい。仮説としては時間反転音では刺激の立ち上がりが条件音と比べると緩徐なランプ状であるため、条件音に最適化した(条件付けした動物の)回路では、条件音に最適化されているため時間反転音に対して十分な皮質活性を引き起こせないと想定される。別の仮説も考慮する。即ち、音刺激の緩徐な立ち上がりにより抑制系が時間的に余裕をもって動員されると仮定すると、時間逆転刺激では活性は訓練の有無に係わらず減少するものと想定される。しかし条件音に最適化した回路ではこの抑制が条件音に対するS/N比を挙げるため増強されているため、その他の音によって動員される抑制も顕著になると推定される。一方、ナイーブ群の回路ではこの増強がないため反転音によって動員される抑制系の関与が弱く、強い活性が引き起こされると推定される。よって両刺激音での活性の”差”が大きくなった可能性についても考慮する。これらを刺激音を編集した音刺激を作成し膜感受性色素を用いて検証する。
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