2011 Fiscal Year Annual Research Report
マウス亜種間コンソミック系統を用いた新規レム睡眠調節遺伝子の単離・同定
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22500380
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺尾 晶 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (10451402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 宣哉 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (20302614)
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Keywords | 覚醒 / レム睡眠 / シータ波帯域ピーク周波数 / 高振幅脳波 |
Research Abstract |
C57BL/6(B6)、MSM/Ms(MSM)、B6を受容系統とし睡眠関連遺伝子の存在が示唆されている5番染色体の1~45cMの領域をMSM染色体と置換したB6-Chr5C^<MSM>(5C)、41~86cMの領域を置換したB6-Cbr5^<MSM>(5T)のマウス4系統について睡眠解析を行い、B6とMSMの間における睡眠表現型の差異と5番染色体遺伝子の寄与を調べた。その結果、特に5TはB6と比較して以下3つの大きく異なる表現型を示した。1)睡眠記録を行った24時間中最も長く覚醒していた覚醒持続時間が、B6に対して5Tでは約2.6倍長かった。2)レム睡眠時の脳波成分の指標となるシータ波帯域ピーク周波数が、B6に対して5Tでは有意に低かった。3)マウスの覚醒時の脳波は通常一定の振幅を保っているが、5Tでのみ散発的に通常時の2倍以上の振幅を持つ脳波が現れた。この脳波の特徴を調べると周波数が6-8Hz、30分間での発生回数が約19回という点において、欠神発作の疾患モデル動物に見られる棘徐波と性質が一致した。さらに、1)脳波解析とビデオ撮影による行動解析を同時に行うことで高振幅脳波発生時にマウスの行動消失がみられること、2)欠神発作治療薬であるエトスクシミドの処置によって高振幅脳波の発生回数が約8%まで抑制されることを確認した。今後、5Tに見られる高振幅脳波が、視床皮質系における発作性の活動に付随したものであることを示すことが出来れば、この脳波が欠神発作のモデル動物の持つ性質と共通するものであると考えることが出来るであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにB6,MSM,5C,5Tの4系統のマウスの網羅的睡眠解析を行った結果、特にB6と5Tの間に1)最長覚醒持続時間、2)シータ波帯域ピーク周波数、3)高振幅脳波、という3つの表現型の差異を見出した。これらの表現型の差異は顕著であり、また生物学的評価を比較的簡単に行うことが出来るため、計画している行動遺伝学的手法を用いた原因遺伝子の絞り込みが十分可能であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記示した3つの表現型の原因となっている遺伝子が、5TのMSM染色体置換領域である5番染色体の41-86cM領域に存在することを想定し、今後は連鎖解析によってそれぞれの原因遺伝子座の絞り込みを行う。具体的には、1)B6と5Tを掛け合わせて得られるF1の睡眠表現型を解析することでこれら3形質の遺伝様式を解析する。2)得られた結果を基に、Flを交配して得られるF2を解析に用いるか、或いは、FlをB6又は5Tに戻し交配して得られるN2を解析に用いるかを判断する。睡眠表現型と遺伝子タイピングを同時に進めることで連鎖解析を実施し、3形質を規定する原因遺伝子について5番染色体上の遺伝子座の絞り込みを行う。
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Research Products
(6 results)