2011 Fiscal Year Annual Research Report
ツメガエル胚の未分化細胞を用いた臓器レベルの膵臓形成と生体移植による機能解析
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22500385
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
有泉 高史 玉川大学, 農学部, 教授 (30286166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 秀治 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (90447318)
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Keywords | 発生工学 / 器官創製 / 膵臓 / 未分化細胞 / 生体移植 |
Research Abstract |
1.試験管内で分化誘導した膵臓の生体移植〔変態期における膵臓の再構築の解析〕 両生類は変態の過程で、体の中のさまざまな臓器を幼生型から成体型に再構築する。本年度は試験管内で分化誘導した膵臓原基を胚に移植して、新たに形成された異所性膵臓の再構築を観察した。宿主胚が成長するにつれて異所性膵臓も次第に大きくなり、体に占める割合は変態開始直前に最大となった。異所性膵臓の組織切片を作製して、抗インスリン抗体や抗グルカゴン抗体による免疫染色を行った結果、発生段階第52期頃より両者に対する陽性反応が認められた。以上より、異所性膵臓は正常な膵臓と同様に変態期に幼生型から成体型へ再構築されることが確認された。 2.膵臓形成における組織間相互作用の解析 膵臓の発生過程では膵臓原基と周辺組織との組織間相互作用が重要な役割を果たしている。そのメカニズムを解析するため、アニマルキャップから分化誘導した膵臓原基と他組織との組み合せ培養を行った。この実験では移植実験の結果をふまえ、膵臓原基(=アニマルキャップ再集合体)と移植部位の組織(表皮、中胚葉、内胚葉)とを組み合わせて培養した。その結果、表皮・中胚葉と組み合わせて培養した場合に、膵臓原基における腺房構造の発達が見られた。また、インスリンの発現の低下と外分泌マーカーであるPtf1aやcarboxypeptidase Aの発現の上昇が確認された。これらの結果から、アニマルキャップから分化誘導した膵臓原基を単独で培養すると内分泌部の分化が見られるが、外分泌部の腺房構造の発達には膵臓原基を表皮・中胚葉と共存させることが必要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の交付申請書には、1)試験管内で分化誘導した膵臓の生体移植〔変態期における膵臓の再構築の解析〕と2)膵臓形成における組織間相互作用の解析、の2点を研究目的に掲げた。本年度の実験と解析により、移植した膵臓の変態期における再構築が確認されるとともに、膵臓の腺房構造の形成に移植部位の表皮・中胚葉との組織間相互作用が重要であることが示され、研究は目的に沿って順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、未分化細胞を用いた膵臓原基の分化誘導法と生体への異所的移植法が確立された。膵臓原基の移植を受けた幼生は順調に発生・成長を続けて成体(カエル)への変態を完了している。今後の研究では、移植を受けたカエルの体内に異所的に作られた膵臓について、臓器としての三次元的な構造を解析するとともに血糖調節能力を中心にその機能を詳細に解析する。これらの実験と解析により、未分化細胞から臓器レベルの膵臓を形づくる実験系を確立して再生医療への応用の可能性を探る。
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