2011 Fiscal Year Annual Research Report
老化促進モデルマウスを用いた加齢による表現型多様性とその原因遺伝子の解析
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22500396
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 英機 独立行政法人理化学研究所, 動物資源開発支援ユニット, 支援ユニットリーダー (40446521)
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Keywords | 老化促進モデルマウス / QTL解析 / アルコール嗜好性 / 運動量 / 記憶 |
Research Abstract |
老化促進モデルマウス(Senescence accelerated mouse,SAM)は、AKR/J系マウスと未知の系統との不測の交雑で生じたコロニーから老化度評点の加齢依存的な増加を指標として確立された系統であり、促進老化を示すP系統(Prone)と正常老化を示すR系統(Resistant)に大別される。本研究ではP6系統とP8系統の表現型の違いを各種行動試験や連鎖解析を行って解析し、加齢依存的な表現型多様性に関わる遺伝子を探索することを目的とする。これまでに2ヵ月齢のP6とP8では、運動量はP8が高く、記憶には差がなく、アルコール嗜好性はP6が高いこと、6ヵ月齢のP6とP8では、運動量はP6が高いこと、記憶はP6が優れていること、アルコール嗜好性はP6が高いこと、を明らかにした。次にP6とP8を交配し、雑種第一代、バッククロス第一代、雑種第二世代のマウスを得、これらのマウスが2ヵ月齢に達した時点で、運動量、記憶、アルコール嗜好性を測定したところ、これらの表現型は多因子疾患であることが示唆するデータが得られた。これらの表現型に対し、P6とP8の間で多型があり、各染色体につき約20cMの間隔となるような90カ所以上のマイクロサテライトマーカーを用いて全ゲノム的なQTL解析を行なった。その結果、アルコール嗜好性については関与している染色体領域が決まりつつある。多因子疾患の解析には、発症と遺伝子マーカーとの相関関係を指標に原因遺伝子の存在領域を絞り込む連鎖解析法が有効であるが、ヒトは寿命が長く遺伝的背景が複雑で交配実験が不可能なため限界がある。そこで自由な交配が可能なマウスなどのモデル動物が広く用いられており、本研究で得られる成果はヒトの遺伝子座との関係を検討解析し、蟷床応用への貢献が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度には原因遺伝子に到達できる可能性が高いため。
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Strategy for Future Research Activity |
SAM系統の雑種第一代マウス、バッククロス第一代マウス、雑種第二世代マウスの運動量試験、記憶学習試験、アルコール嗜好性試験から得られた表現型が多因子疾患であることが示されたため、引き続き、マイクロサテライトマーカを用いた全ゲノム的なQTL解析を行う。これらの結果とデータベースをもとに、原因となる遺伝子を含む領域を見出し、ヒトの遺伝子座との関係の比較検討を行う。
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