Research Abstract |
人工心臓やペースメーカを代表とする体内埋込み人工臓器の安全管理用の体外-体内間通信において,現生体組織を通信媒体として利用する人体通信を利用した次世代式経皮情報通信システムの開発を試みている.本年度は,体内に埋め込み可能な小型通信デバイスの開発と動物実験による評価を行ったので報告する. 開発した通信システムは,体外側の送波周波数10MHz,体内側の搬送波周波数4MHlzのASK変調による全二重通信システムである.体外側通信ユニットは直径38mm,厚み13-5mmで電極にはAg/AgCl電極を使用し,体内側通信ユニットは,直径34mm,厚み10mmで電極には白金イリジウムを使用している.また今回の実験では,大きさは直径22mmで長さ42mmの砲弾型で電極には白金イリジウムを用いた直腸挿入用通信ユニットも開発した. 動物実験は,研究協力者である東北大学加齢医学研究所・心臓病電子医学分野の山家智之教授のもと,東北大学動物実験倫理委員会の許可の元に行った.体重29.4kgのメスの成ヤギを使用し,体内側通信ユニットを腹腔内,胸腔内,心臓の心膜上に埋め込み,体外側通信ユニットを体表上の首,耳,角に装着し双方向通信実験を行い,通信特性の評価のみならず,心臓生理学的影響を調べるため通信中の心電図を同時計測した.通信実験は,手術直後の0日目,10日目,28日目に行い(直腸挿入用通信ユニットを28日目に挿入),28日目の実験終了後にヤギを擬死させ,体内側通信ユニットの接触状態を確認した.その実験の結果,胸腔内の肋骨裏に設置した体内側通信ユニットは10日目以降に通信不能となったが,それ以外の体内通信ユニット・直腸挿入用通信ユニットは,体表上のすべての体外側通信ユニットと115kbpsの通信速度で全二重通信を行うことができた.またその際の心電図は,通信中も通信前と変化が無く,心臓直近で通信電流を放電しても心臓生理学的な影響がないことを確認できた.胸腔内に設置した通信ユニットは,電極-生体組織間の接触状態が悪く,次年度の課題として体内側通信電極-生体組織間の電気的,機械的安定性が課題となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目で体内埋込み可能でかつ電子回路的工夫によりミクロショックを起こすことのない体内埋込み通信デバイスを開発し,動物実験で体内と体外の至る所の2点間で4週間の長期にわたり安定に高速な通信を世界初で実現でき,かつ心臓生理学的に生体への影響がないことを明らかにしたことより,おおむね順調と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
4週間の動物実験により,生体組織と電極間の機械的・電気的な安定が本通信システムの鍵となることが分かり,計画通りに最終年度は体内および体外の通信電極に最適な電極について検討を行い,体内-体外の安定な通信の実現により本プロジェクトの目標達成とする.体内の通信電極においては,体外側通信電極と同様に生体組織-電極間のインピーダンスが小さいことがもとめられ,さらに生体組織と金属材料である電極との安定な結合とが求められる,そこで,次年度の研究では生体組織-電極間のインピーダンス測定法を検討することから開始し,研究計画通りに生体組織と安定な結合が期待できる電極について電極インピーダンスを評価材料として検討を行う.
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