2010 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系幹細胞の分化形質転換を誘導するナノ・トレンチ構造培養基板システムの構築
Project/Area Number |
22500430
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武田 直也 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (60338978)
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Keywords | 細胞パターニング / ナノ表面構造 / 電子線リソグラフィー / 間葉系幹細胞 / 分化誘導 / 人工ニッチ |
Research Abstract |
幹細胞を特定の細胞種へと分化誘導させる技術開発は、再生医療への応用の点からも重要である。幹細胞の分化誘導には、外部から添加した液性の生体シグナル因子による刺激や遺伝子導入など生物学的手法による制御について多くの研究がなされている。一方、培養基材の硬さなど、接触する基質の材料特性に応じて幹細胞の分化に違いが生じることが報告され、培養基材の特性を利用した積極的な分化誘導の試みが新たに広がりつつある。そこで、本研究では、生体シグナル因子を使用せずに培養表面の構造により間葉系幹細胞の分化を誘導する新たな細胞培養基板の構築についても検討した。 当研究室で開発した、電子線リソグラフィー技術を用いた細胞のパターニング培養基板は、ナノオーダーのサイズで精緻なパターンの描画が可能である。このシステムにより作製した、幅僅か100nmオーダーの一本の細長い溝(トレンチ)状のパターンに間葉系幹細胞を播種したところ、溝に沿って接着、伸展し、力学的負荷を伴うと考えられる紡錘状の形態を呈した。一般的な培養皿での培養と比較して、ナノ溝で培養された紡錘形の間葉系幹細胞には、接着面積の減少、溝に沿ったアクチンフィラメントの配向、核の変形が見出された。また、播種後5日間の培養期間において、神経分化マーカーであるTuj1の蛍光抗体染色に対する陽性反応が確認された。この抗体染色によるタンパク質の発現レベルでの検出に加えて、RT-PCRのmRNAの検出においてもTuj1の発現が確認された。これらの結果より、マイクロ・ナノパターンの微小培養場を適切に設計・構築し、通常とは異なる力学的環境において間葉系幹細胞を培養することで、液性因子を用いることなく特定の細胞腫(本研究では神経細胞)への分化誘導が可能であることが強く示唆された。
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