2011 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系幹細胞の分化形質転換を誘導するナノ・トレンチ構造培養基板システムの構築
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22500430
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武田 直也 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (60338978)
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Keywords | 細胞パターニング / ナノ表面構造 / 電子線リソグラフィー / 間葉系幹細胞 / 分化誘導 / 人工ニッチ |
Research Abstract |
幹細胞を特定の細胞種へと分化誘導させる技術として、従来の生物学的手法である、液性の生体シグナル因子を添加したり遺伝子を導入したりする制御ではなく、細胞が接着する培養基質の材料物性や表面微細構造より制御する新たな技術開発を進めている。そこで本研究では、ナノオーダーのサイズで精緻なパターンの描画が可能である電子線リソグラフィーを基盤とした独自の細胞パターニングシステムを用い、幅僅か100nmオーダーの一本の細長い溝(トレンチ)状のパターンを微細な培養場としてヒト間葉系幹細胞(MSC)を生体シグナル因子を使用せずに培養し、増殖や分化挙動を評価した。 これまで用いてきたヒト胎盤由来MSC(hpMSC)に加えて、ヒト骨髄由来MSC(hbmMSC)の評価を行ったところ、通常平面培養細砲と比較して幅500nmの溝パターン上で培養した細胞では、有意な増殖抑制が観察された。また、GAPDHのmRNA発現を基準としたqRT-PCRによる定量的なmRNA発現解析では、神経分化マーカーであるNestinならびに骨分化マーカーであるOCNの発現の顕著な亢進がhpMSCならびにhbmMSCのいずれもで見出された(5日間培養時で、Nestinはそれぞれ約10倍と約7倍、OCNは約4倍と約3.5倍)。また、神経細胞の分化系列において、神経幹細胞マーカーのNestinはいずれのMSCで発現亢進しているが、神経前駆細胞ならびに成熟神経細飽マーカーであるTuj1はhbMSCでは亢進していなかった。すなわち、ナノパターンの微小培養場で、液性因子を用いることなく分化誘導が可能であること、また分化の方向性は定まっている訳でなく、複数の遺伝子が動いていることが強く示唆された。さらに、hpMSCとhbmMSCの比較においては、Tuj1の発現の差異が見られ、MSCの種によって分化挙動の異なることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接着と分化誘導の観点からナノ溝パターン輻の条件を最適化し、hpMSCとhbmMSCについて複数のmRNAを対象としたqRT-PCRによる網羅的な遺伝子発現の解析を進めた。神経系および骨系の各分化マーカーの発現を示すと共に、MSC細胞種の違いにより遺伝子の発現パターンに違いがあることを明らかにした。また、分化誘導機構の解析にむけて、微細パターン上への細胞の接着様式の評価を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子の網羅的な発現解析をさらに進め、発現が見出されたマーカータンパク質の経時的な変動も評価する。特に、特定の細胞種へ分化し得るのかを、既にマーカー遺伝子発現が見出されている神経と骨を中心に検討する。このため、ナノパターン上で分化誘導した細胞を回収して通常の培養器材に再播種し、マーカータンパク質や遺伝子の持続的な発境と細胞機能を検証する。特定の細胞種への分化が確認された場合は、実験動物に移植時のin vivoでの挙動評価も検討する。また、基質からのメカノストレスの伝達に焦点をあてて分化誘導機構の解析を行うため、接着関連タンパク質や細胞骨格タンパク質、さらに細胞骨格の制御に関わるRhoファミリーGタンパク質の局在や配向を、蛍光染色手法とCLSMやTIRFなどの顕微鏡観察を組み合わせて評価する。
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