Research Abstract |
【目的】僧帽弁口血流(TMF)および僧帽弁輪運動(MAV)速波形の指標は,心不全の予後推定に有用であるが,軽症心不全患者における予後予測は難しい.本研究では,軽症心不全患者において,LPP負荷時のTMFの反応性が将来の心事故予測に有用であるかどうかを検討した.また,LPP負荷の反応性と心肺機能検査(CPX)による運動耐容能との関係について検討した. 【方法】安定期の洞調律の不全患者270例を対象とした.うち21例では,心臓カテーテル検査と同時に心エコー・ドプラ検査を施行し,LPP負荷前後の各種指標を比較した.負荷前のTMFは,235例が弛緩障害(RF)パターン,35例が偽正常化(PN)パターンを示した.RFパターン例に対してLPPを行い,負荷中もRFパターンであった例を安定RF群(n=161),負荷によりPNパターンに変化した例を不安定RF群(n=74)に分類した.この3群について,その後の死亡,心事故(心臓死,急性心不全,急性心筋梗塞,脳卒中)について観察を行った.CPX施行例については,LPPの反応性とVO2との関連を検討した. 【結果】左室径,左室駆出率,E,e'には安定RF群と不安定RF群の間に差がなかったが,不安定RF群のE/e',左房容積指数は安定RF群と比べて有意に大で,MAVの心房収縮期波高は有意に小であった.不安定RF群の全心事故および急性心不全回避率は,安定RF群に比べて有意に劣っており,PN群のそれとほぼ同等であった.安定RF群と不安定RF群のVO2に有意な差を認めなかった. 【結語】TMFがRFパターンを呈する軽症心不全患者において,LPP負荷時のTMFの反応性は予後を規定する因子であり,LPPを用いた"前負荷ストレス心エコー法"は臨床的に有用な方法であると考えられた.LPP負荷による運動耐容能の予測はできなかったが,症例数が少数であったことも原因と思われ,継続して症例数を増やすこととした.
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