2011 Fiscal Year Annual Research Report
超音波血管機能検査装置の高度化と血流依存性血管拡張機序の解明
Project/Area Number |
22500449
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
新田 尚隆 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究員 (60392643)
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Keywords | 超音波医科学 / 血管機能 / 血流依存性血管拡張反応 |
Research Abstract |
血流依存性血管拡張(Flow-Mediated Dilation;FMD)は、血管壁上のずり応力を主たる刺激源として、血管内皮細胞より産生される一酸化窒素の血管壁内への拡散による平滑筋弛緩して血管径が拡張する反応である。FMD検査ではこの血管拡張率(%FMD)が計測されるが、刺激源であるずり応力及び他因子変動によるバラツキが大きく、内皮機能を的確に評価できない問題があった。本研究では、この問題を解決すべくFMD検査装置を高度化し、人間工学的評価に基づき前記刺激因子を特定して、血流依存性血管拡張反応における機序解明のための知見を得ることを目標とする。 平成23年度は前年度に開発した高度化アルゴリズムが実際の血液に適用可能であるかどうか、ウシ血液を用いた実証を行った。流量をポンプ制御しながらウシ血液をシリコンチューブ内に循環させ、取得したエコーデータに対して高度化アルゴリズムを適用して、粘度、ずり応力、管径、管ひずみを算出した。この際、ウシ血液を生理的食塩水で希釈しヘマトクリット(Ht)を変化させた5通りの血液(Ht=30%~45%)を対象とした。各Htの血液に対する測定精度を検証するため、回転式粘度計で得られたずり速度-粘度曲線、レーザー変位計で得られた管変位それぞれから、粘度、ずり応力、血管径、血管ひずみの真値を算出して、エコーデータに基づく測定値と比較した。血液粘度及びずり応力については、血液性状特徴化のためのモデル化を行い、該モデルにエコーデータからの測定値を適合させて求めた特徴化パラメータを用いて、血液のHt変化に対する識別能を評価した。真値と測定値の残差に基づいて信号処理パラメータを最適化した結果、Ht変化と測定値との相関がR2=0.88に向上し、Ht変化の識別が可能であった。この結果に伴い、Ht変化によるずり応力の変化も検出可能であった。また管径及び管ひずみの測定値と真値との相関も良好であった。以上から、高度化の目標が達成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は、FMDの検査装置を高度化し、人間工学的評価に基づいて血流依存性血管拡張反応における機序解明のための知見を得ることである。H22-23年度で高度化を行い、H24年度で機序解明のための知見を得る計画である。 H22-23年度の成果により高度化の目標が達成されたことから、本研究は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初の計画通り進展しており、最終年度であるH24年度は、人間工学的評価に基づき血流依存性血管拡張反応における知見を得るための研究を遂行する予定である。
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