2010 Fiscal Year Annual Research Report
病理組織学的手法を用いた関節拘縮の病態解明と理学療法学的治療の効果判定
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22500454
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松崎 太郎 金沢大学, 保健学系, 助教 (10401910)
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Keywords | 関節拘縮 / ラット / 関節軟骨 / 血管増生 |
Research Abstract |
本年度は,短期間から長期間にわたって関節不動化を行ったラット膝関節拘縮モデルを作成し,膝関節内の関節構成体やそれに関わる血管系,並びに神経系の組織がどのように変化しているのかを病理組織学的および免疫組織化学的に観察し,拘縮の病態像を明らかにする事を目的に研究を行った。 ラット膝関節をギプスにより不動化したものでは,半月板周囲から関節腔に線維芽細胞と微少な毛細血管に富む膜様組織(肉芽様組織)が侵入しているのが観察され,また軟骨表面にも線維芽細胞からなる組織が増生しているのが観察された。これらは一部で癒着しているものも見られ,関節軟骨と癒着した部分では軟骨基質が失われ,軟骨細胞も観察されなかった。また,多糖類染色を行ったところ,軟骨表層では染色性が消失しており,軟骨基質の多糖類が産生されていない事を示していた。後部関節包は肥厚と線維の密生化を認めた。 創外固定により屈曲位で不動化したものでは,ギプス固定のものより軽度ではあるが同様の所見が観察された。また,伸展位で不動化したものでは関節軟骨に対し荷重が掛かると考えられる部分で軟骨の菲薄化が観察された。どちらの群においても多糖類染色では軟骨が接する部分(荷重が常に掛かっていると考えられる部分)で染色性が消失しており,関節軟骨に何らかの変化が生じている事が示唆される。 中枢神経麻痺による関節不動では,関節腔内への膜様組織(肉芽様組織)の侵入,後部関節包では線維の密生化が観察されたが,末梢神経損傷による関節不動では関節軟骨の変化は殆ど認められず,しかしながら後部関節包の肥厚/線維の密生化は生じていた。 関節不動化による研究は散見されるが,実験の手法が様々であり,一致した見解は見られていない。今回,5種類の関節不動化を行ったが,様々な像を示している。これは拘縮の成因により病態,ひいては治療手技も考慮する必要が示唆される。
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