2011 Fiscal Year Annual Research Report
病理組織学的手法を用いた関節拘縮の病態解明と理学療法学的治療の効果判定
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22500454
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松崎 太郎 金沢大学, 保健学系, 助教 (10401910)
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Keywords | 関節拘縮 / ラット / 関節軟骨 / 血管新生 |
Research Abstract |
本年度は,短期間から長期間にわたって関節不動化を施行し関節拘縮を作成したラットに対して関節可動域運動,物理療法(温熱療法など)の理学療法学的治療を行い,その結果関節構成体,神経組織にどのような変化(治療効果)が認められるかを病理組織学的に観察し,理学療法手技の効果を明らかにする事を目的に研究を行った。 2週間の関節不動化により,ラットの膝関節伸展制限は平均77.2±7.4度,対照群では平均19.3±2.8度であった。拘縮を生じさせたラット膝関節に対し,バネ秤を用いて定量的に伸張を加え,関節可動域運動を施行した。この時,伸張する力は予備実験にて麻酔下で健常ラットの後肢を伸展させるのに必要なカ(1N)とした。可動域運動は実験期間中に創外固定を除去し3分間施行し施行後は再び創外固定を装着した。その結果,実験期間終了後の伸展制限は51.0±4.3度と固定群に対して改善が見られたが,対照群とはまだ差が見られた。関節構成体の病理組織学的検討では固定のみの群で滑膜組織・肉芽組織の増殖による軟骨の置換像と肉芽組織中に血管の走行とうっ血が観察されたが,運動を行った群では固定群と比較して線維芽細胞の増生は軽度であり,軟骨の置換像は観察されなかった。また,トルイジンブルー染色を行ったものでは,固定のみの群では軟骨基質中の多糖類産生がほぼされていない事が観察されたが,運動を行った群では表層のみで染色性が低下しているものの,大部分の軟骨で多糖類産生が保たれている事が観察された。関節包では両群に明らかな差は見られず,肥厚と線維の密生化が見られた。 末梢神経損傷による関節不動モデルに対し今年度は創外固定による不動化を追加した。その結果,膝関節伸展制限は神経切断群で41±3.5度,神経切断・不動化群では48.8±6.2度であった。両群ではほぼ関節構成体に変化は見られず,関節構成体の変化に末梢神経が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物を使用した種々の後肢膝関節拘縮モデルの作製を確立し,当初の計画通りに関節可動域運動を施行して関節構成体の変化を観察する事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
膝関節不動化により坐骨神経周辺の神経周膜が密生化する事,また筋間脂肪・膝蓋下脂肪体の萎縮が観察され,神経周膜の変化,脂肪の萎縮に対する関節可動域運動の効果を関節構成体の変化と平行して観察する。また,短期(2週間)の実験により実験期間を長くしても変化が見られない可能性があるため,長期に渡る実験を行わずに短期(2週)の実験期間中での頻度について検討する事としたい。
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