2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳出血後の効果的なリハビリテーション療法の開発ならびに脳機能改善機序の解明
Project/Area Number |
22500456
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石田 和人 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (10303653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥橋 茂子 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90112961)
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Keywords | 脳卒中 / リハビリテーション / 運動療法 / Constraint-induced movement therapy / acrobatic training / トレッドミル運動 / 神経可塑性 / 神経栄養因子 |
Research Abstract |
今年度は、脳出血モデルラットに対するconstraint-induced movement therapy(CIMT)の一要素である麻痺肢の強制使用(forced limb use; FLU)およびacrobatic training(AT)の実施方法を確立し、その効果を示した。 FLUを脳(内包)出血後早期(術後翌日)から1週間実施すると、全身的に捉えた運動麻痺の回復や脳出血による脳組織損傷体積には変化を認めなかったが、ランダムに配置した梯子上の移動能力(ladder test)や前肢をペレットにリーチして把握し食べる動作機能(singl epellet reaching test)のような比較的巧緻的な動作能力の改善が認められることを立証した(Behavioural BrainuRes誌に発表)。また正常なラットにFLUを1週間実施すると、海馬における神経栄養因子(VEGF,GDNF)のmRNA発現が減少し、同部位の神経新生の抑制および神経細胞障害の初期像と想定されているArgyrophil III陽性細胞(dark neuron)の出現が認められることを示した(J Neurosc Res誌に発表)。しかし、行動学的には異常を示さず、これらは一過性の変化であることを確認した。 一方、食年度確立したacrobatic training(AT)により、脳出血モデルラットの機能回復が促進されることについても確認した(学会発表)。脳(線条体)出血4日後からATを実施すると、脳出血による脳組織の損傷体積(線条体)および大脳皮質の厚さ(委縮の指標)には差異を認めないが、免疫組織化学染色による解析から、大脳皮質運動野におけて、神経活動マーカーである△FosBタンパクの発現が高まり、synaptophysin(シナプス前マーカー)およびPSD-95(シナプス後マーカー)の発現も増加を認めることから、同運動刺激はシナプスの可塑性を高める効果を促すとともに運動機能の回復促進効果をもたらすものと考察した。 このように、ここまでの研究成果から、脳出血モデルラットに対する運動療法の効果を検証する上で、一昨年前に報告したトレッドミル運動に加え、麻痺肢の強制使用(FLU)およびacrobatic trainingが有効であることが示された。このことは脳出血後のリハビリテーションの有用性を科学的に解明する上で重要な過程であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳出血モデルラットに対する3種類の運動刺激を提案したため、それぞれ一定の期間も必要なことから、実験に要する時間が不足することも懸念したが、各運動による機能回復効果を示すことができた点から概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究プロジェクトの最終年度となるが、脳出血モデルラットに対する運動効果の作用機序に焦点を当てる必要がある。今年度までは組織化学的解析による半定量的な指標で検討した点も多く、次年度では、当初から計画はしているが、ウエスタンブロッティング法を中心に、生化学的な解析を中心に取り組みたいと考えている。
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