Research Abstract |
【目的】これまでの一連の研究において股関節疾患患者の筋の質的機能向上(typeII線維の選択的トレーニング)には,(1)単関節運動よりも多関節運動,(2)直線的運動よりも回旋運動がよ果的であることが示された.しかし,運動(movement)レベルでなくその上位階層である歩行などの姿勢・動作(motion)レベルでの制御について考えた場合,後1つ重要な要素がある.それは(3)床反力ベクトルの方向である.多関節運動下では,このベクトルの方向により二関節筋と単関節筋の動員比率が変化する.そこで本研究では,(1)股関節疾患患者の歩行時床反力ベクトルと二関節筋の動員比率の関連性について動作解析装置を用いて検討する.本研究成果は現状に於いて二関節筋に過剰に依存した股関節疾患患者の姿勢制御の新たな治療戦略に寄与するものである. 【本年度実績】 本年度は大学内で健常者を対象とした予備実験を行った.健常男性10名を対象に,ブリッジ動作時における肢位と床反力ベクトルの方向,及び下肢筋活動の関連性について検討した.動作の開始肢位として膝関節角度を110°,90°,70°の膝3角度とした.さらに3角度で,足底部の蹴る方向を頭側,真下,尾側(床面に対し,それぞれ約100°,80°,60°)の3方向に分けた全9条件とし,各条件での下肢筋活動と床反力角度を求めた.被検筋は,大殿筋,内側広筋,半腱様筋,内側腓腹筋とし,各筋の%IEMGを算出した.その結果,ブリッジ動作における各筋の筋活動量は膝関節屈曲角度よりも,床を蹴る方向,すなわち床反力角度の影響を受ける傾向にあることが示された.特に二関節筋に関しては床反力ベクトルの方向の影響が強く見られた。以上のことから,股関節疾患患者においては,二関節筋の動員比率が高まるような姿勢制御(床反力制御)をしている可能性が示唆される.本件については,23年度の研究で検討する予定である.
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