Research Abstract |
重症心身障害児(以下,重症児と略す)とは,重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複し,日常的な生活介護のみならず,常に医療的な管理を必要とする人たちである。全国の重症児数は約39,000名と推計されているが,約13,000名が専門の「重症児施設」の入所者であり,一方,2倍の26,000名は居宅で家族によってケアされている。本研究では,重症児の在宅ケア対策の一つとして,重症児専門施設で提供される医療管理・生活介護・教育支援など各種のサービスを可能な限り居宅でも受けられること目指し, ICT(情報通信技術)を活用した支援機器システムを開発し,これが効果的に活用される包括的な情報ネットワーク基盤を構築して,その実証運用と評価を行うことを目的とした。 重症児は多くが日常的に医療的管理を必要とする人たちであり,時には急に健康状態が悪化することがある。そのため,ICTを利用した在宅ケア支援においても,バイタル信号をモニタリングする機能は重要である。しかし,「比較的健康状態が安定した在宅重症児」では,生活支援や簡単な診療であれば,テレビ電話のみで要望を満たすことができる。一方,「健康状態が不安定な在宅重症児」に対しては,バイタル信号のモニタリングは不可欠であるが,その人数は前者と比べて少ないと思われる。そこで,バイタル信号のみを扱うICT機器を考え,必要に応じてテレビ電話と併用するシステムを想定した。このような検討の後,ひかり電話網によるテレビ電話を中心とした機器システムの導入を行った。そして,全国3つの地域(北海道,滋賀県,京都府)の重症児居宅2箇所,重症児施設4施設,特別支援学校1校,ケアハウス1施設の協力を得て,それぞれ特色のある在宅ケア支援モデルを設定して実証運用を開始し,評価データを収集するために現在も運用を継続している。
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