2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500526
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西井 淳 山口大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (00242040)
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Keywords | 二足歩行 / UCM解析 / 子ども / ニホンザル / 関接間協調 / 関接間シナジー |
Research Abstract |
生体は高い身体自由度を活用することで運動タスクを臨機応変に達成することができる。例えば、運動中にある関節の伸展が不十分であっても他の関節運動でそれを補うことにより目的の運動タスクを実現できる。本研究では,(1)前年度に引き続き成人および子ども(10才)の前進歩行、ニホンザルの二足歩行の運動計測データに対してUCM解析を行うことによって、このような関節間協調(関節間シナジー)が歩行中のどの様なタイミングにどのように活用されているかを調べ、その比較検討を行った。また、今年度は成人の後進歩行についても同様の調査を行った。(2)さらに歩行中に観察される関節間協調が神経系の働きによるものか、それとも筋骨格系の物理的要因によるものかを探るための予備的実験を行った。 (1)に関しては、これまでに20代の成人の前進歩行においては、脚を前に振り出す際の足先が最も床と近付く瞬間に,その足先の高さを調節する関節間協調が強く働き、立脚相終期の両脚支持期においては、腰の位置を調節する関節間協調が強く働くことを示してきた。今年度新たに計測した被験者についてもこれらの特徴は共通して観察された。前者はつまづきを防ぐ上で、後者は体幹位置を調節して転倒を防ぐ上で重要な機能をもつと考えられる。また、この前者の関節間協調については、成人の後進歩行および子どもやニホンザルの二足歩行においても観察されるが、後者については被験者によって観察されない場合もあることを確認した。このことは学習や成長もしくは進化の過程で歩行の制御戦略が変化している可能性を示唆する。(2)については、歩行中の筋電位解析と、受動歩行器における関節間協調を調べることで、ヒトの歩行中の関節間協調の一部は神経系の働きによるものであり、一部は身体の物理的構造に起因するものであることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は、前年度に引き続き、成人、子ども(10才)、ニホンザルの二足前進歩行の運動計測データに対してUCM解析を行い、関節間協調(関節間シナジー)が歩行中のどの様なタイミングにどのように活用されているかを調べ、その比較検討を行うことであった。以上の点に加え、今年度は成人の後進歩行の解析を行っており、さらに関節間協調の生成メカニズムを探るための予備的実験を行なうことが出来たので、研究は当初の計画以上に進展していると判断でする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き被験者数を増やすことで、これまでに得られた知見の検証を進めると同時に、今後は筋電位の計測・解析や、受動歩行器の歩行時に生じる関節間協調も探っていくことで、歩行中に観察される関節間協調が神経系の働きによるものか、それとも筋骨格系の物理的特性によるものかを考察を進めていく予定である。
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