2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500529
|
Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
山中 健太郎 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (90359662)
|
Keywords | 運動制御 / 反応時間課題 / 抑制機能 / 脳波 / 経頭蓋磁気刺激 |
Research Abstract |
本研究は、動作の抑制直後に次の動作遂行を試みるGo/Stop/re-Go課題を用いて、課題のパフォーマンスの詳細な検討と、課題遂行中の大脳皮質および運動出力経路活動の記録から、「随意的な反応抑制」の直後の動作へ与える影響を明らかにすることを試みるものであった。まず平成22年度において、一時Stopした直後のre-Go課題の反応時間の平均値が、一時Stopした時間に応じてV字型に変化し、分散が増大する傾向を明らかにした。その結果から、一時Stop時間が短い場合と長い場合にその後の反応を遅らせる二つのメカニズムの存在が示唆された。そこで平成23年度は、Go/Stop/re-Go課題遂行中に(1)経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて動作筋に生じる運動誘発電位(MEP)から運動皮質の興奮性の変化を調べ、一時Stop中の運動出力経路のかかる抑制の影響を調べること、(2)脳波(EEG)を用いて一時Stopからre-Goに至る過程での脳活動を注意や運動準備の観点から調べること、を中心に研究を実施した。その結果、(1)として、一時Stop時間が短い場合、直後のre-Goを開始する時点ではまだ直前のStopの影響でMEPが小さいことが示された。これはすなわち、その時点ではまだ運動皮質を含む運動出力経路に強い抑制がかかっていて、運動出力がしにくい状態にあることが示唆された。また、(2)として、一時Stop時間が長いときにre-Go反応が遅くなる試行では、re-Go刺激呈示後の頭頂・後頭部でのEEGの位相同期が弱まること、そしてStop刺激呈示前のα帯域振動のパワーが弱まっていることが示された。これはすなわち、Stop刺激呈示前に第一課題(Go反応)への運動準備が十分な試ではre-Go刺激の知覚が十分にできなくなっている可能性が示唆された。これらの知見は「随意的な反応抑制」の直後の動作に影響する神経生理学的要因を明らかにするきわめて重要なものであった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究の目的に記した主要な実験およびデータの解析はほぼ完了し、現在論文を執筆し投稿する段階に達している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は大きく以下の3通りの方針で本研究を推進していきたい。(1)EEGのダイナミクスに関するさらなるデータの解析を進める。(2)課題遂行中のTMS-EEG同時計測を行い、課題遂行中の脳内の神経結合を明らかにする。(3)明らかに「随意的な反応抑制」のパフォーマンスが異なる状況をつくり、その場合に脳・神経系を中心とした生理指標にどのような違いが生じるかを検討する。
|