2011 Fiscal Year Annual Research Report
東西神秘主義思想の観点から見た日本の雅楽・神楽の身体
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22500539
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
木村 はるみ 山梨大学, 教育人間科学部, 准教授 (00195372)
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Keywords | 芸能 / 身心変容技法 / 宗教体験 |
Research Abstract |
1.国立民族学博物館での資料収集とシンポジウムへの参加をとして地球レベルの広い視野で芸能と非日常性、超自然存在との交流、変身の思想、暦の昨日などを研究することが出来た。 2.芸能の中では、天界・異界・地上界の存在が空間を共有し、物語を演じる。神話や伝説は生きた身体と言葉で伝わる。そこには人間存在の秘密がある。 3.身体とともに文化は海外へ国境を越えて伝播し、海外には日本文化と日系文化がある。日本人の文化と日本の歴史が生んだ様々な身体文化は、武道や芸能、暗黒舞踏などの実演の中に見出すことができる。それは、東洋的な身体を持たなくても伝承可能である。 4.身体技法には自己変革の力を持ちつつ、人種・国境を超えて、身体文化をさらに構築する機能があることがわかった。 5.身体のアイデンティティとその運動性は、母国語性と深い関係を持つものとして、自我と言語における母国語の関係と同様に、無意識の中にあり、元型(原型)を変形して個人の身体に表出する。自分の所属する集団の所有する言語は、トリビアルな記憶として筆録としての歴史の中に見え隠れする。例えば、日本の古事記のような民族の記憶を共有する文書と日本人の身体の感覚は深層で連動している。 以上の事から、 深層心理的な解釈と、身体の記憶、そして身心の変容をもたらす技法の役割について考え、東西のみならず、世界の文化形成の深層に働く、自我に働きかける身体文化としての日本の芸能に着目することが重要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.国立民族学博物館での資料収集と研究者との交流を通して、人類文化のなかでの舞踊や身体について考える視点を得た。また、この研究には、地上界だけでなく、異界、天界の存在を含める事の重要性も認識した。2.新たに比較文明学会、身心変容技法研究会などの他領域学会に所属することになり、既存の「体育」の研究を超える研究が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールド調査を継続する。身体所作の解釈には場の力や歴史性を考慮し、身心変容技法研究会で得た知見を援用する。 儀式と芸能、あるいは宗教と芸能における身体の普遍性と民族性という点では、こころの深層と身体との関係を文化史的にみる必要がある。研究開始時期には予想しなかった研究者との有益なネットワークにより、本研究を宗教学や文化人類学の方法論の中で継続する予定である。
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Research Products
(3 results)