2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22500551
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
久保 正秋 東海大学, 体育学部, 教授 (30119672)
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Keywords | 体験活動 / 身体的体験 / 感性の教育 / 身体教育 / 生成としての教育 / 身体運動 |
Research Abstract |
本年度は研究計画に従って、課題1.「身体運動」と「体験」の理論的検討、課題2.「体験活動」プログラムにおける「身体運動」の分析(調査)を行った。 課題1に関しては、身体運動における「体験」が生起する時間に注目し、ベルグソン、バシュラール、ボルノーらの展開する時間性の問題を検討した。その結果、前年度に論じたベイトソンの「三重のサイバネティックスモデル」、その「個のシステム(1)」が「社会システム(II)」を超えて「エコ・システム(III)」へ溶け込むという自己生成の「体験」は、直線的な連続した時間において生起するものではなく、非連続的な「瞬間」において生起するのものであると論じた。これらの論考は、その一部を東海大学紀要に投稿し、受理された。その後の論考に関しては現在、論文の執筆中である。 課題2に関しては、典型的な「体験活動」プログラムのなかで「身体運動」がどのように展開されているかの調査を行い、「生成の体験」との関連性を分析した。その結果、「身体運動」そのものの種別と「生成の体験」との関連性を明らかにする事項を認めることはできなかった。このことは、「生成の体験」が人間の身体運動を基盤とするが、身体運動そのものに依存するのではなく、個別性を有していることを示唆している。 以上の研究結果から、感性教育としての身体教育の実践面からのアプローチを試みる本研究は、身体運動の「体験」の時間性と個別性という観点から検討する必要がある。この詳細な検討は次年度の研究課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載した各年度の課題を順調に検討している。しかし本年度は、「体験」の時間性の問題に関する理論的検討が予定通りに進まず、論文として纏めることが不十分であった。また、予定していた海外の体験プログラムに関する調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「体験」の時間性の問題に関する論文の執筆を優先的に進める。これは今回の研究の理論的中心論文となる。併せて海外の典型的なプログラムの調査を展開する。 最終目標である感性教育としての身体運動の可能性の検討は、当初の計画ではモデルプログラムの作成を通じて演繹的にアプローチする予定であったが、身体的体験が非連続的時間性と個別性を有するという今回の結果から、実際のプログラムを対象として帰納的に分析を進めることとする。
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