2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦前における女子体育教師の確立過程と役割:『中等教育諸學校職員録』を手懸かりに
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22500552
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Research Institution | Tokyo Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
掛水 通子 東京女子体育大学, 体育学部, 教授 (20096663)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | )中等教育諸學校職員録 / 私立東京女子体操音楽学校 / 女子体育教師 / 高等女学校 / 女学校 / 職歴 / 助教諭心得 / 高等女学校教授要目 |
Research Abstract |
本年度は明治期の追加分析と大正期の分析を行った。明治期の追加分析では、私立東京女子体操音楽学校第1期(明治35年12月卒業)から第12期(明治41年3月25日卒業)までの卒業生が体操科教員として就職した全国の中等学校(師範学校,高等女学校,各種学校としての女学校等)学校名,各学校での受持ち教科,教員職名,教員継続状況等の実態を明らかにした. 1904(明治37)年『諸學校職員録』には第3期までの卒業生のうち6人.1906(明治39)年には8期2部までの卒業生のうち50人,1908(明治41)年には第12期までの卒業生のうち57人が記載されている.この数は卒業生の約2割に相当する.そのなかで,明治期における7人の文検合格者は全員が中等学校体操科教員となっていた.各年とも,高等女学校への就職が8割程度と多く,なかでも公立が多い.公立高等女学校就職者のうち,女子師範学校でも兼職している者もあった.卒業生の赴任地は単年度では28府県,3年分の何れかの赴任地は34府県と1外地に及び,卒業生が全国に散らばって行ったことが明らかとなった.体操科1科のみの受持ちが最も多いが,次第に音楽と併せて2教科を受け持つことが増えている.音楽以外には習字,理科,国語,裁縫で,3,4,6教科の受持ちも見られた.6か月という短期養成で大多数が教員免許を所持しなかったため,助教諭心得等の低い位置に置かれた.このことが高等女学校等の中等学校女子教員のなかで,女子体操科教員が差異化されることになった原因となったと考えられる. 創設間もない私立東京女子体操学校卒業生は,その大多数が教員免許を所持しないまま,全国の府県立高等女学校等に体操科または音楽科も併せ持つ体操科教員として迎えられ,急速に体操科教員として定着したことが確認できた. 大正期については、現在、学会発表準備中で8月に発表し、その後、論文を執筆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は5年計画の3年目で当初計画では、大正期の分析を終え、学会で発表し、論文を執筆する予定であった。しかし、平成24年5月10日に勤務する東京女子体育大学は創立百十周年を迎えたため、突如、学園史として創立百十周年記念誌を作成することとなり、その編集委員長として多くの時間が割かれることになった。この予定外の仕事のため、科学研究費補助金による研究のエフォートを35%ととしていたが、エフォートを下げねばならないことになったのため、やや遅れている。やや遅れつつも、膨大な量の『中等教育諸學校職員録』の分析を進めることができ、明治期、大正期の分析を終えた。現在、昭和期の分析を始めている。 明治期については、平成22年度、平成23年度にすでに3つの学会発表をし、2論文を学術誌に掲載済であったが、平成24年度に明治期に関する新たな論文を執筆し、紀要に掲載された。さらに、新たな学会発表を4月に行った。大正期については、現在、学会発表準備中である。7月と8月に行われる二つの学会で発表し、その後、論文を執筆する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度突然生じた学園史編纂のための仕事により下げてしまったエフォートを35%に戻す。当初の研究計画から遅れが出ている大正期に関する学会発表と論文執筆を進めながら、昭和戦前期の『中等教育諸學校職員録』の分析をする。 大正期になると、これまでの高等女学校、各種学校としての女学校に加えて、実科女学校が設置され、女子教育の高まりとともに学校数が急速に増加する。さらに昭和期になると、学校数が一段と増加する。このような状況のため、研究開始前の予想より、『中等教育諸學校職員録』の分析は時間のかかる煩雑な作業となっていることが問題点である。研究補助者の力も借りながら、何とか所期の目的を達成したい。
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