2011 Fiscal Year Annual Research Report
卓越した球技スポーツ選手における実践知の獲得過程に関する質的研究
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22500562
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
會田 宏 筑波大学, 体育系, 准教授 (90241801)
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Keywords | カン身体知 / コツ身体知 / 偶発位相 / ゲシュタルトクライス的関係 |
Research Abstract |
本研究の目的は2つある.1つは球技の一流競技選手が持つ実践知の獲得過程,すなわち「運動ができるようになる勘どころ」「運動感覚に支えられた身体の知恵」が形成されていく過程について明らかにすることである.もう1つは研究成果を,技術・戦術的に発達段階にある球技選手,特にジュニア期における球技選手の効果的な指導に役立つ知見として実践現場に提供することである. 平成23年度は,1つ目の目的を達成するために,ハンドボール,サッカー,バレーボールなど,さまざまな球技種目の競技選手15名を対象に,実践知の獲得過程に関するインタビュー調査を行った,それぞれの対象者の語りを質的に分析した結果,球技における実践知の獲得では,まず「何も意識しないで動作ができる(できてしまう)段階」から始まり,次に「動作そのものを意識してできるようになる段階」を経て,最後に「相手の意図を意識してそれに応じた動作が前意識的にできるようになる段階」へと到達することを明らかにした. 2つ目の目的を達成するために,インタビュー調査で得られた対象者の語りを「偶発位相」(動きのコツと出会う最初の段階)に着目して質的に分析した結果,個人戦術に関する実践知を発生させるためには,カンもコツも働かせなければならない状況の中でトレーニングを行う必要があることを明らかにした.その理由として,身体知を構成するカン身体知(身体化された戦術的思考力)とコツ身体知(身体化された技術力)はゲシュタルトクライス的関係を形成しているため,それぞれを絶縁的に養成しても「できる」という身体知は生まれてこないことを示した. なお,研究実績の一部は,第25回日本スポーツ運動学会大会シンポジウム(平成24年3月26日)において,「コツ身体知とカン身体知の峻別と統合を目指したハンドボールの指導」として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に設定した2つの目的のいずれにおいても,調査および調査結果の分析がほぼ完了している.
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Strategy for Future Research Activity |
球技の一流競技選手を対象に,実践知の獲得過程に関するインタビュー調査を引き続き行う.平成23年度までの調査とあわせて,実践知の獲得過程を事例的に示すとともに,調査結果を「原志向および探索位相」「偶発位相」「図式化位相」に着目して分析し,実践現場に有用な知見を提示する.
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Research Products
(2 results)