2011 Fiscal Year Annual Research Report
体操教師矢島鐘二に関する研究 我が国の学校体育模索期における活動と果たした役割
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22500567
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
福地 豊樹 群馬大学, 教育学部, 教授 (40134267)
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Keywords | 矢島鐘二 / 学校体育 / 学務課長 / 昭和初期 / 若松市 |
Research Abstract |
今年度の研究課題は、矢島鐘二の秋田県さらに若松市在職の足取りをたどることに重点をおいて、資料調査を実施した。この課題は、体操教育に尽力した人物の教育観のその後の連続と不連続を検証する課題であり、大正期から昭和初期の体育政策の状況を反省的に検討する視点を確立することに置かれている。 今回の成果は、以下のように整理される。 1.矢島氏の執筆したスポーツ美談は、秋田県在職においても、女学校の校友会雑誌に掲載されていた。美談は氏の教育観の反映を反映したものと解釈でき、学校長という管理職にあっても、競争主義に向かう教育には、懐疑的である氏の姿勢をみることができた。秋田県在職中の学校諸行事に、その教育観を確かめることができた。 2.矢島氏は、秋田県の校長職から、昭和10年に九州の若松市学務課長に転身し、3年余りをその地で勤務するが、その間の動向は、現在まで明らかではなかった。今回は、前年度、その手がかりをさぐった公立の図書館・文書館を中心に資料の収集を行った。その結果、福岡県教育会の機関誌「福岡県教育」、「若松市公報」の探索により、矢島氏の在職期間、昭和10年より昭和13年までの、学務課長の動向を、確認することができた。旧若松市は、現在の北九州市に合併された経緯もあり、行政文書の散逸が甚だしく、「若松市公報」の存在の確認は、大きな課題であったが、今回その確認ができた。また、矢島氏在職中に「スポーツマンの精神」という小冊子が若松区藤木小学校で作成されていることが判明した。ここにも、この美談にこだわる矢島氏の教育観をみることができた。 3.今回の調査では、前年度もお世話になった群馬県高崎市に在住する矢島氏のご家族(矢島氏の孫に当たる矢島 弘氏)の聞き取り調査も行い、若松に関する資料を提供してもらうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昭和初期に視点をあてた歴史研究であり、資料(史料)の発掘が欠かせない要件であるが、人物の足跡をたどることのできる史料の残存は、地域的な格差が大きく、北九州市(旧若松市)の行政史料の散逸は大きく、活動の詳細を検討する作業には、障害となっている。しかし、今回の調査で、新たに発見された資料からも、活動の再現は可能であり、現在までの資料から、具体的な成果を模索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
九州における活動の検討を行うことに加え、東京へ転職後(昭和14年以降終戦まで)の、矢島氏の活動を明らかにし、矢島氏の40年近い教育活動の総括を行いたい。学校体育模索期(大正かた昭和戦前期まで)の教育政策と個人の活動との関わりから、教育行政(具体的な学校教科の確立)の果たした役割と限界を検討する作業を進める。
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Research Products
(2 results)