2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22500572
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹之内 隆志 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (50252284)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | スポーツ発達心理学 / スポーツ選手 / 自我発達 / 心理的競技能力 / 危機経験 / 心理社会的発達課題 |
Research Abstract |
本研究の目的は,スポーツ選手のパーソナリティや心理的競技能力の発達の特徴,およびこれらの発達に影響する経験を発達段階(中学期・高校期・大学期)ごとに明らかにし,スポーツ発達心理学の構築に向けた基礎的知見を集積することである. パーソナリティについては自我発達に着目し,前年度までに,スポーツ選手の自我発達に危機経験(運動部活動や日常生活で迷ったり悩んだり,努力したりする経験)が関連することやスポーツ選手の自我発達に関連する危機経験は発達段階で異なることを明らかにしてきた.これらの知見を踏まえ,本年度は,スポーツ選手が運動部活動や日常生活において遭遇する「危機経験」は「心理社会的発達課題の達成」に寄与し,それゆえスポーツ選手の「自我発達」や「心理的競技能力の発達」が促進されるという仮説を構築し検討した.まず,青年期までの心理社会的発達課題として,基本的信頼感の獲得,勤勉性の獲得,心理的離乳,性役割の内面化,アイデンティティの確立,親密性の獲得を取り上げ,これらの達成度を測定する尺度を予備調査を通して確定した.その後,中学男子スポーツ選手を対象者として,これらの心理社会的発達課題の達成度,運動部活動や日常生活における危機経験,自我発達,そして心理的競技能力を調査し,相互の関連を検討した.その結果,要因間の関連が示された.しかし,これらの関連には正(仮説を支持する関連)および負(仮説を支持しない関連)の両方の関連が混在していたため,仮説についてはさらなる検討が必要であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,スポーツ選手のパーソナリティおよび心理的競技能力の発達の特徴やこれらの発達に影響する経験を発達段階ごとに明らかにすることである.現時点で,パーソナリティ発達の特徴およびパーソナリティ発達に影響する経験については中学期,高校期,大学期の3つの発達段階ごとに検討できている.心理的競技能力の発達の特徴および心理的競技能力の発達に影響する経験に関しては,中学期については検討できている.現在は,研究期間の4分の3が終了した時点であるが,研究目的についても4分の3程度が達成されており,そのため本研究はおおむね順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において,「スポーツ選手は運動部活動や日常生活での危機経験を通して心理社会的発達課題を達成しながらパーソナリティや心理的競技能力を発達させる」という仮説を構築し,中学男子スポーツ選手を対象者として仮説の検討を行った.そこで今後はまず,高校・大学スポーツ選手にも調査を実施し,この仮説を発達段階ごとに検討していく.さらに,この仮説の検討結果や結果の発達差も踏まえて,スポーツ選手のパーソナリティおよび心理的競技能力の発達の特徴やこれらの発達に影響する経験を発達段階ごとに整理する.そして,スポーツ選手の心理的側面を発達段階を区切って検討することの意義や必要性,すなわち「スポーツ発達心理学」の構築可能性について明らかにしていく.
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Research Products
(1 results)