2011 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代国際オリンピック委員会におけるオリンピックの政治的中立性の形成過程
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22500593
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
中村 哲夫 皇學館大学, 教育学部, 教授 (80164317)
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Keywords | 1930年代 / オリンピック / IOC |
Research Abstract |
本研究は、(1)1933年1月のドイツにおけるナチス政権誕生から、1940年4月のヘルシンキにおける第12回オリンピック大会の中止までの約8年間を対象に、その間に展開されたオリンピック大会をめぐる諸議論を、オリンピックの理念に関する相剋の過程として分析し、(2)これらの過程が最終的には、国際オリンピック委員会(IOC)において、オリンピックの政治的中立性の観念が形成される過程であったことを実証しようとするものである。 研究期間の2年目である本年度は、1936年の第11回ベルリン大会と1940年の第12回東京大会(開催されず)を対象とした先行研究の検討、ならびに一次史料の収集・解読を行った。研究実績は、大きく分けて以下の3点である。 (1)上記両大会を対象とした内外の研究図書を入手し、その内容の分析と解釈を行った。その結果、とりわけ課題として挙がった点は、1940年に札幌で開催される予定だった冬季大会をめぐる諸議論(スキー競技者のアマチュア資格問題等)が、IOCと諸国際スポーツ競技連盟との抗争の感を呈し、東京大会の開催に大きな影響を及ぼした点である。この課題は、次年度に解明される予定である。 (2)前年度に収集したオリンピック研究センター所蔵の一次史料の解読とそれらの関係づけの作業を行った。IOCの主要メンバー間の書簡を中心とした史料を分析し、ベルリンと東京の両大会に対する各メンバーの思惑や対応の違いが明らかになった。このことは、今後の研究進行上有益である。 (3)1930年代のオリンピック運動においてカール・ディーム(ベルリン大会組織委員会事務局長)が果旨たした役割を検討するため、ドイツ・スポーツ大学(ケルン)においてカール・ディーム文書の調査と収集を行った。この史料は次年度、解読の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の検討、一次史料の調査・収集ならびにそれらの解読も順調に進んでいる。1940年開催予定の札幌冬季大会の東京大会開催への影響等新たな課題が浮かび上がった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年に当たる次年度は、主要には東京大会以後のIOCの動向を解明し、本研究の目的に沿って、研究のまとめを行う。具体的な作業としては、引き続き一次史料の収集を行うことと、札幌冬季大会の開催をめぐるIOCと諸国際スポーツ連盟の関係を検討することである。そして、以下の3点、(1)IOCにおいて、オリンピックと政治をめぐる関係がベルリン大会から東京大会へどのように受け継がれたのか、(2)札幌冬季大会が東京大会にどのような影響を与えたのか、(3)東京大会返上後、第12回大会はヘルシンキに移されたが、1939年9月の第2次大戦勃発から1940年4月のヘルシンキ大会中止までの間に、第12回大会開催をめぐってIOCにおいてどのような議論が展開されたか、という3つを課題とする研究論文3編をまとめ、1930年代の国際オリンピック委員会において、オリンピックの政治的中立性の観念が形成される過程を明らかにする。
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