2011 Fiscal Year Annual Research Report
運動による抗うつ・抗不安効果と脳の可塑性に関する行動神経科学的研究
Project/Area Number |
22500612
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
北 一郎 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (10186223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西島 壮 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (10431678)
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Keywords | 運動条件 / ストレス / うつ病モデル / 脳神経活動 / セロトニン神経 / CRF神経 / HPA軸 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
慢性的ストレス(環境的・精神的)はうつ病や不安神経症の危険因子である。これらの精神疾患は、ストレスに対する視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA軸)の過剰反応、モノアミン神経系の伝達異常、さらには海馬神経細胞の脱落・萎縮などが主な原因と考えられている。近年の大規模疫学調査や介入研究は、継続的な運動・身体活動の実践が心の健康に多様な恩恵効果を与えてくれることを示しており、最新の神経科学研究は、運動によるストレス・不安・抑うつの軽減や記憶・学習能の向上、等の効果は、運動による身体的効果の副次的なものではなく、脳への直接的効果によるものであることを明らかにしてきている。しかし、この"運動の癒し効果"を発現する脳内神経機構や有効な運動条件については依然として解明されていない。本研究では、運動による脳内神経活動の定性的・定量的解析と行動変容の定量的検討を合わせて、運動による脳機能構造への影響及び可塑性について明らかにすることを目的とした。まず、運動条件の違いに焦点をあて(自発運動と強制運動/低強度と高強度;乳酸性作業閾値以下と以上)、脳内神経活動とうつ・不安様行動の変化について検討を行った。ターゲットとした脳部位は、中脳縫線核(セロトニン神経;抗うつ・抗不安作用)、視床下部室傍核(CRF神経;HPA軸に関連)であった。結果として、自発運動あるいは低強度運動は、CRF神経の活動を過剰に高めることなくセロトニン神経活動を賦活させ、さらにうつ・不安様行動を減少させることが示唆された。さらに、薬理的に慢性高グルココルチコイド血症状態のうつ病モデル動物を作製し、自発運動のうつ病発症予防効果についても検討した。その結果、自発運動はうつ・不安様行動の増加を抑制し、ストレスやうつに関連する脳内神経活動にも効果的に作用する傾向にあった。このことから、自発運動はうつ病予防にも有効である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、うつ・不安症状を評価するために動物による複数の行動実験を行っているが、それらの反応に予想を若干上回る個体差がみられ、実験条件の見直し、測定回数の増加などを検討していたため。また本研究費を含め予算の減額があり、新たな実験システムづくりに若干の遅れが生じているため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、運動による抗うつ・抗不安に関する行動変容と脳神経活動の応答特性、ストレス関連疾患のモデル動物に対する運動の予防・改善効果については成果が得られつつあり、今後は、それらの背景にある脳の機能及び可塑性について検討するために、運動時に活性化する脳神経回路の機能的マッピング、運動による神経新生、神経成長因子、神経伝達物質の発現特性の解析を目指し研究を進める。
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Research Products
(10 results)