2011 Fiscal Year Annual Research Report
高所・低酸素環境での身体運動が引き起こす酸化ストレスの定量的解明
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22500659
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
長澤 純一 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 准教授 (40228002)
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Keywords | 酸化ストレス / 低圧 / 低酸素 |
Research Abstract |
低酸素環境での運動が酸化ストレスにおよぼす効果の検証として、昨年に引き続き、富士山五合目山頂往復によるフィールド実験をおこなった。被験者は高齢の非鍛錬者3名とし、高齢の登山ガイド(鍛錬者)と比較した。 酸化ストレス度の指標として、血中ヒドロペルオキシド濃度を、d-ROMs法によって定量した。また、乳酸/ピルビン酸比、NTproBNP、エリスロポエチン(EPO)、尿中8-OHdG、免疫学的見地から唾液中のIgAを測定し、酸化ストレスを多面的に評価するデータを収集した。 電子スピン共鳴法によって定量した血漿のスーパーオキサイドラジカル生成量は、一般高齢者で平地-山頂において1.02から0.73と有意に低下(p<0.01)し、山頂-登山後では0.73から1.00と有意な上昇(p<0.01)を示したが、鍛練高齢者では有意な変動が認められなかった。他方、血清ヒドロペルオキシド濃度、8-OHdG/クレアチニン比、d-ROMsおよび酸化LDL濃度は、群間ならびにすべての測定地点で有意な変動を示さなかった。なお、血漿乳酸/ピルビン酸濃度比とヒドロキシラジカル生成量の間には、有意な相関が認められた(r=-0.72、p<0.05)。すなわち、redoxs statusが酸性側にある方がヒドロキシラジカルの生成が低下していることが示された。以上、鍛練度のいかんに関わらず酸化ストレスの種々パラメータに異常な変動は認められず、通常の冨士登山は、酸化ストレス障害をきたすような破綻を生じさせるものではないと考えられた。他方、低酸素刺激に対する感受性(EPO)ならびに、酸化ストレスの起点であるラジカルの生成量は鍛練度の差によって大きな違いが示されており、抗酸化応答のメカニズムに興味が持たれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、6名の被験者を設定したが、実際に登山を完遂し、かつデータに問題のない被験者は半数の3名であった。ただし、フィールド実験として測定環境の安全性などを考えると、これ以上の実験条件設定は不可能だと感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年も富士山山頂旧測候所の利用ができる見込みであり、データ不足の測定点を補完し、まとめとして論文投稿につなげたい。今後の課題設定のために、低圧低酸素環境下での身体運動に対する抗酸化応答メカニズムの明らかになっていない点を明確にしていきたいと考えている。
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